低用量ピルが効いてないかも? 〜効果が得られにくいケースとその対策〜

今回は、薬剤師の視点から、「低用量ピルの効果が落ちるケースと対策」を詳しく解説します。避妊でも月経痛対策でも、低用量ピルユーザーや検討中の方、保護者の方などはぜひご覧ください。
重見大介 2025.01.03
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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低用量ピルは、避妊、生理不順の改善や月経困難症の緩和など、さまざまな健康上のメリットがあることから、多くの女性にとって日常生活に欠かせない薬となっています。しかし、その効果を最大限に発揮させるためには、適切に使用しなければなりません。服用方法や体調次第で、低用量ピルがきちんと吸収・代謝されずに期待する効果が得られなくなってしまうことがあります。

この記事では、低用量ピルの効果が得られにくいケース、そしてその対策について、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。

***

この記事でわかること

  • ピルの基礎知識(ピルの分類、低用量ピルについて)

  • 吸収不良のメカニズムと主な原因

  • 低用量ピルの効果を弱める/強める他の薬

  • 効果が落ちやすい状況への対策 6選

  • マイオピニオン(私個人の考えや意見)

***

今回の記事も、以前に配信した痛み止めの記事とスポーツをする女性向けの記事で解説してくれた大学院時代の同級生の友人(熊澤良祐:くまさん)に解説してもらいました!ありがとう!
気になる方はこちらもぜひ読んでみてください。

1. ピルの基礎知識

1.1 ピルの分類

いわゆる「ピル」と呼ばれる薬は、基本的に卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類のホルモンが配合されている薬剤です。

エストロゲンの含有量によって高用量ピル(エストロゲン:0.05mg以上)・中用量ピル(エストロゲン:0.05mg)・低用量ピル(エストロゲン:0.05mgより少ない)・超低用量ピル(エストロゲン:0.03mgより少ない)に大きく分けられます。

高用量ピルや中用量ピルは効果が大きいものの副作用も起こりやすいので、現在は低用量ピルや超低用量ピルの使用が一般的となっています。

1.2 低用量ピルについて

低用量ピルは、28日を1周期(1クール)として、毎日決まった時間に服用します。基本的には、生理(月経)の初日から服用を開始します。

低用量ピルは、以下のような作用により、高い避妊効果があります。

  • 排卵の抑制:エストロゲンとプロゲステロンが脳に働きかけ、脳に「妊娠した」と認識させることで排卵を防ぎます。

  • 子宮内膜の変化:子宮内膜を薄くし、受精卵の着床を難しくします。

  • 子宮頸管粘液の粘度上昇:精子が子宮内に入りにくくなります。

また、低用量ピルは、ホルモンバランスを安定させることによって、避妊以外にも以下の効果があります。

  • 生理痛や月経過多の軽減

  • 月経周期の調整

  • 月経前症候群(PMS)の症状軽減

  • 子宮内膜症や卵巣がんの発症リスク低減

ただし、これらの効果を十分に得るためには、薬剤が体内で適切に吸収・代謝される必要があります。

一方、主な副作用としては、不正出血、吐き気、頭痛、下痢、むくみなどが挙げられます。特に、エストロゲン含有量が多いほど血栓症(血管の中に血の塊ができてしまう病気)のリスクを増加させる可能性があります。服用を開始した最初の数ヶ月が最もリスクが高く、予防するにはこまめに水分を補給して血流の停滞を防ぐことが大切です。

2. 吸収不良とは?

吸収不良とは、服用した薬が消化管から血中に十分に取り込まれない状態を指します。吸収不良が起こると、薬の有効成分が血流に入らず、薬の効果が十分に発揮されない可能性があります。
低用量ピルの場合、ホルモンの適切な吸収が妨げられると、血中のホルモン濃度が低下し、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 避妊効果が低下する

  • 月経周期の乱れが改善しない

  • PMSの症状が軽減されない

吸収不良は特定の要因によって引き起こされるため、そのリスクを把握して適切に対処することが重要です。低用量ピルの吸収不良が起こる主なケースには、以下のようなものがあります。

2.1 消化器系疾患[1,2]

胃腸の健康状態は、薬の吸収に直接影響を与えます。
以下の場合、腸の吸収能力が低下し、低用量ピルの吸収が阻害されることがあります。特に、小腸に病変がある場合、低用量ピルの吸収が不十分となるリスクが高まります。

  • クローン病や潰瘍性大腸炎:これらの炎症性腸疾患を持つ人では、腸壁の炎症や損傷によって薬         剤の吸収は阻害されてしまいやすいです。

  • 胃の手術後:胃バイパス術や胃切除手術を受けた場合、薬剤が十分に溶解・吸収される前      に腸を通過してしまうことがあります。

2.2 嘔吐や下痢

低用量ピルの服用後(特に2時間以内)に嘔吐や下痢があった場合、薬剤が腸に到達し吸収される前に体外に排出されてしまう可能性が高まります。

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