【最新の注目研究3選】個人的に気になった研究知見を紹介します(2026/1/7)

個人的に気になった最新の研究知見を3つ、わかりやすくご紹介します。
重見大介 2026.01.07
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

今回はサポートメンバー限定記事です。最後までご覧になりたい方はサポートメンバー登録をお願いいたします。

*なお、今回は新企画初回の記事なので、大半を無料登録の読者の皆さんも読めるようにしました。ぜひご覧ください!

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新しい定期記事シリーズ「最新の注目研究3選」を始めてみます

日々、新しい研究結果や知見が世界中で報告される時代。

私も産婦人科医、研究者の端くれとして、ほぼ毎日のように研究論文を読んだり、自身で論文を書いたり、他の研究者の論文を査読したりしています

また、ベンチャー企業の経営に携わる立場として、新しい知見へのアンテナを常に張るよう心がけています。

論文を読めると世界中の知見を知ることができ、知識がつくだけでなく新しい研究や事業のアイデアが湧いてくることも少なくありません。

そんな私が、医療者や研究者の世界で名が知れている医学雑誌に最近掲載された最新論文の中で、これは面白いな、知っておくと有益だなと思ったものを3つ紹介する、という定期記事シリーズを始めることにしてみました!
*基本的に全てオープンアクセス(誰もが全文を読めるタイプの論文)のものだけを対象とします。また、個人的主観によるものです。

とはいえ、海外の最新論文の内容をそのまま日本に当てはめたり自身のセルフケアに取り入れたりすると、懸念や弊害もあるというのが難しいところです。

なので、本シリーズでは各論文を以下の構成でコンパクトに紹介していこうと思います。

  • 論文の概要

  • 産婦人科医として興味深いと思った点や理由

  • 研究内容に関連する読者さん向けの重見からのメッセージ

こうすることで、私が目を通している研究を共有でき、論文概要がわかり、産婦人科医視点での解釈を知れ、私個人としてお伝えしたいメッセージを読んでいただけるかなと。

きっと面白く読んでいただきながら、新しい学びを得たり、日常生活に役立てていただけるのではないかと思います。。!

では始めていきましょう!
今回は特別に最初の2つの論文まで無料公開とします。次回からは3つとも限定公開とする予定なのでご了承くださいませ。)

今回ご紹介するのは以下のトピックです。

  • 米国における産科麻酔についての最新の推奨や考え方

  • トレーニングによる産後の尿もれ改善効果に関する新たなエビデンス

  • 次の妊娠時の早産を予防するためのプレコンセプションケア

今回は初の配信なので、ぜひ最下部にあるコメント欄に以下についてなどをご意見として記入いただけると嬉しいです。今後の参考にさせていただきます!

  • 役立ちそうか・面白そうか

  • 今後も続けてほしいか

  • 頻度はどのくらいを希望するか(月1回や隔週など)

(1) 米国における産科麻酔についての最新の推奨や考え方

1. 論文の概要

  • Obstet Gynecol誌に掲載された「REVIEWS: Clinical Expert Series」論文です。米国の産婦人科学会の公式ジャーナルなので、一定の公的見解と捉えられるでしょう。

  • 産科病棟で産科医・助産師・看護師・麻酔科医が同じ「判断の土台」を共有し、スムーズな連携を促すため、産科麻酔の要点整理をしたものです。

  • 陣痛中の硬膜外麻酔(無痛分娩)が、お産の進みや帝王切開率に与える影響、開始タイミングの考え方をまとめています。実際の臨床現場でよくある状況に対するベストアンサーも表にまとめられています。

  • 帝王切開時の麻酔では、脊髄くも膜下麻酔後の血圧低下を防ぐ「予防的フェニレフリン持続投与」など、米国での標準的ベストプラクティスが紹介されています。 

  • 産後は、子宮収縮薬(オキシトシン)の適正量や、産後疼痛軽減のための多角的管理の考え方を整理しています。

2. 産婦人科医として興味深い点

私が特に重要だと感じたのは、「無痛分娩はお産を遅らせる/帝王切開が増える」という不安に対し、現代の低濃度麻酔薬を用いた管理をきちんとすることで、分娩進行や器械分娩・帝王切開のリスクをほぼ上げないと明確に整理している点です。

また、早期(子宮口が十分に開く前)に無痛分娩を開始しても成績は変わらず、「無痛分娩を開始する上で子宮口開大の条件は不要」と述べています。

さらに「最新の検査設備がないと実施できない」「無痛分娩は自閉スペクトラム症(ASD)の原因になる」など、起こりがちな誤解に対して、専門学会が安全性を明確に発信している点も、患者さんへの説明に役立つなと感じました。

3. 米国での推奨(無痛分娩が普及している前提)をふまえた読者さん向けメッセージ(約300字)

米国の考え方で印象的なのは、「医学的に問題がなければ、『痛みを和らげたい』という本人の希望だけで十分な適応」と明言していることです。

そして、子宮口が何cm開くまで待つ、といった画一的なルールよりも、本人の希望するタイミングを尊重すると書かれていることも重要な点だと感じます。

無痛分娩は「楽をするため」ではなく、つらさを軽くし、落ち着いて出産に臨むための大切な選択肢の一つです。日本の無痛分娩普及率は上昇傾向にあり、2024年の調査では16.2%に達しましたが、欧米諸国(70〜80%以上)と比較すると依然低い水準です。また地域差がかなり大きく、麻酔科医の不足や施設体制が課題であり、米国とは異なる状況なので本論文の推奨をそのまま今の日本に求めることは難しい面があります。とはいえ、こうした「米国の実臨床における最新の推奨や考え方」を参考にしながら医療体制を整えていくことは日本にとっても有益だと私は考えています。

国にも注力してもらい、できるだけ早く充実した産科麻酔体制が整備されていくことを期待したいですね。

(2) トレーニングによる産後の尿もれ改善効果に関する新たなエビデンス

1. 論文の概要

  • BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology誌に掲載された「SYSTEMATIC REVIEW」論文です。欧州のジャーナルです。

  • 出産後の尿もれ(産後尿失禁)は、産後1年間で15〜30%程度にみられるとされます。 

  • 骨盤底筋トレーニング(PFMT)や腹筋トレーニング(AMT)、電気刺激(ES)やバイオフィードバック(BFB)などの「トレーニングによる介入」の効果を、系統的レビュー+メタ解析(複数の論文を統合して評価する研究手法)で評価しました。

  • 19個の研究を統合し、ランダム化比較試験で「介入群 vs 対照群」の比較では統計学的に有意差が明確でない一方、介入前後比較ではPFMT単独やES/BFB併用、PFMT+AMTで症状改善が示されました。

  • 結論として、PFMT(単独または併用)は産後尿失禁の治療方法として有力な選択肢と考えて良さそうですが、研究のばらつきが大きく、今後の更なる検証が必要だと書かれています。

2. 産婦人科医として興味深い点

実は、これまでは「骨盤底筋トレーニングは産後尿失禁の予防効果はあるけど、治療効果があるかははっきりしない」というのが客観的な見解でした。なので、「治療効果も期待できる」という点はかなり意義のある知見かなと思いました。

臨床的に面白いのは、「何がどれくらい効くのか」を併用療法も含めて整理している点です。PFMTにES/BFBや腹筋トレーニングを組み合わせたアプローチで、前後比較研究では症状改善が示されました。

一方で、ランダム化比較試験の「対照群との厳密な比較」だと有意差がはっきりしない結果にもなっており、研究間のばらつき(介入内容・強度・評価法などの違い)が大きいことが示唆されます。

なお、「集中的(回数が多い)・長めの介入ほど効果が大きい可能性」も述べられており、生活に合わせて「できるだけしっかり続けられる工夫」が重要だとも言えるでしょう。

3. 妊娠中や産後の女性読者さん向けのメッセージ

尿もれは、恥ずかしいことでも、我慢すべきことでもありません。妊娠・出産に伴う体の変化で起こりやすく、生活の質にも大きく影響します。

この論文では、骨盤底筋トレーニング(いわゆるケーゲル体操)を中心に、必要に応じて機器(電気刺激やバイオフィードバック)や体幹・腹部のトレーニングを組み合わせることで、症状の改善が期待できることがまとめられています。個人的には、骨盤底筋トレーニング(+腹筋)だけでも試す価値はあるんじゃないかな、と思っています。

ポイントは、自己流で頑張りすぎないことですかね。やり方が合っていないと効果が期待しにくくなってしまうので、始める前に産婦人科医や骨盤底リハビリテーションに詳しい理学療法士に相談できると安心です。なお、強い尿意を我慢できない、排尿時の痛み、血尿、発熱などがあれば別の病気の可能性もあるため、早めに受診してくださいね。

骨盤底筋トレーニングについては過去の記事で詳しく解説しているので、併せてぜひ参考にしてください!

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