「クリトリス」について医学的・生物学的に解説します
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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女性の外性器の一部である「クリトリス(陰核)」。
非常に敏感で「気持ちよさ」を感じやすい部位なので、どうしてもエロの文脈で話題になることが多いです。そして、意外に産婦人科医であってもクリトリスについてしっかり勉強することはありません。(もちろんクリトリスの部分に病気ができることもあるので診察や治療をしますが、特別詳しい知識を持っているわけではないんですよね)
そこで、今回はクリトリスについて大真面目に医学的・生物学的に調べ、解説してみることにしました。きっと「そうだったんだ。。!」ということが少なくないはずですし、よくある誤解も解いていきますので、ぜひ最後まで読んでみていただけると嬉しいです。
この記事でわかること
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クリトリスとは解剖学的にどんなものか
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クリトリスの役割
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クリトリスは他の哺乳類にもあるのか
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クリトリスに関するよくある5つの誤解(小さいと感じにくい?頻繁に刺激すると感度が鈍くなる?など)
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
クリトリスってどんなもの?解剖学的な解説
クリトリス(陰核)は女性の外性器の一部で、小陰唇に囲まれた上部に位置する小さな突起です。これは、男性のペニス(陰茎)に相当する器官なんです。
目に見えるクリトリスの先端部分(亀頭)はだいたい豆粒大くらいで、直径はおよそ3~8mm、長さは1~1.5cm程度とされています。そして、通常、普段は包皮に覆われており、これは男性の陰茎の包皮(亀頭を覆う皮膚)に相当しています。(解剖図のイメージ画像はセンシティブなので、読者さんだけが見えるこの段落の直下に置いておきます)
しかし、意外に知られていないのが、クリトリスは実は思っている以上に大きな器官であり、外から見えている部分は「氷山の一角」にすぎないということです。
クリトリスは内部に長く細長い「脚」や球状の組織を左右に広げていて、それらは腟の周囲まで達しています。内部構造まで含めると、大きさは10cm程度にもなっていると報告されています。(文献1)
組織学的には男性の陰茎と同様に海綿体組織から成り、性的興奮時には血液が充満して勃起し、サイズが一時的に大きくなります。
そして、クリトリスは極めて豊富な知覚神経を有します。
主な神経は陰部神経の枝である陰核背神経(dorsal nerves of the clitoris: DNC)で、これが左右からクリトリスに入り込み、その敏感な感覚を司っています。長い間、「これらの神経の数はおよそ8000本くらいじゃないか」と考えられていたのですが、人間のクリトリスにどれだけの神経線維が入っているかを、顕微鏡で数えて実際に確かめた研究はほとんどありませんでした。
そんな中で、2023年に報告された研究では、5人の患者さんが摘出手術を受けた際に余ったごく短い部分(5mm)を使わせてもらい、神経の断面を顕微鏡で観察して、神経の線(軸索)を数えました。その結果、ヒトのクリトリスには少なくとも約1万本もの神経線維が存在することが明らかとなりました。(文献2)
研究チームの熱意にびっくりさせられる研究ですね。。!
とまぁこのように神経が密集しているため、クリトリスは身体の中でも特に敏感な部位となっています。
さらに血管も豊富で、性的刺激により陰核は充血し、色や硬さに変化が生じます。
なお、クリトリスは、快感を得ることがほぼ全ての目的とする器官とも言われており、尿道や生殖に直接関与しない点で、他の器官と一線を画しているとも言えるでしょう。
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