ポルノ視聴について知っておきたいこと 〜若者の性に及ぼすさまざまな影響〜

ポルノコンテンツに触れることで、特に若者の性にどのような影響が生じるのでしょうか。詳しく解説します。
重見大介 2025.09.08
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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スマートフォンを開けば、あらゆる情報が一瞬で手に入る時代。中でも、性的に露骨なポルノコンテンツへのアクセスは、これまでになく簡単になっています。子どもや若者が「いつでも」「どこでも」「誰にも知られずに」こうしたコンテンツに触れられる環境がごく当たり前になりつつあるということですね。

ただ、脳や価値観がまだ成長過程にある思春期などの若者にとって、ポルノの刺激はどのような意味を持つのか、本人たちも大人たちも詳しく知らない状況であると言えるかもしれません。

本記事では、最新の研究知見をもとに、現代の若者のインターネット上のポルノコンテンツの利用実態と、それに関連する心理・社会的要因、リスク、そして対応のあり方について、わかりやすく読み解いていきます。

*前回の記事もぜひ併せてご覧ください。

この記事でわかること

  • デジタルネイティブ時代のポルノ消費の現状

  • 青少年のオンラインポルノの視聴実態

  • どんな若者がポルノを視聴しやすいのか

  • オンラインポルノ視聴の影響とリスク

  • 状況を改善するためには何が必要か

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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デジタルネイティブ時代のポルノ消費

インターネット技術の発達とスマートフォンの普及により、インターネット上のポルノコンテンツの消費は、時間や場所を問わず、誰でも容易にアクセスできる状況となりました。こうした環境の変化は、特に脳が発達途上にある青少年にとって、かつてない影響を及ぼす可能性が懸念されています。従来、大人向けとされていた性的に露骨なコンテンツに対し、青少年が接触する機会が飛躍的に増加しているのは、世界的な問題とも言えるでしょう。

また、こうした利用は「意図的な視聴」だけでなく、「非意図的な視聴」があることも特徴です。インターネット広告、SNS上のリツイートや共有、あるいはチャットアプリなどを通じ、本人の意思にかかわらず性的コンテンツに接触する場面が増えています。

特に検索フィルターが十分に機能していない場合や、家庭や学校での使用制限が曖昧な場合、18歳未満の未成年者であっても簡単にこうした画像や動画にアクセスできてしまいます。

このような環境の変化は、青少年の性意識や行動に影響を及ぼすとともに、性的リテラシーやセルフイメージの形成にも影響する可能性があります。加えて、インターネット空間では、性的コンテンツが「大量に」「即座に」「無制限に」消費できるという特性があり、それが一部の若者にとっては強い刺激となり、依存的な利用へとつながる懸念も指摘されています。

特に最近ではAIを用いたディープフェイク(人工知能技術を用いて生成された偽の画像や映像、音声、またはそれらを生成する技術のこと)も急速に発達・普及してきており、「ディープフェイク・ポルノ」が大量生産されつつあることが大きな問題となってきています。

*2024年に日経新聞に掲載された記事では、「写真を送ってくれれば全員の服を脱がせます」と謳うサービスが触れられていました。恐ろしいですよね。

青少年のオンラインポルノの視聴実態とは

青少年がどのように性的に露骨なコンテンツを利用しているのかを明らかにすることは、まず現状をよりよく理解するうえで重要です。

青少年のオンラインポルノの利用に関しては、調査によって数%から約90%と、非常に広い範囲として報告されています。この大きなばらつきの要因には、「ポルノコンテンツの定義の違い」「意図的利用と非意図的暴露の区別の曖昧さ」「調査期間(過去1週間・1か月・1年・生涯など)の違い」などがあります。

つまり、単に「ポルノコンテンツを見たことがあるか」という問いだけでは、青少年のポルノ消費の実態を正確に捉えることは難しいということですね。

また、オンラインポルノ視聴の頻度や手段も多様化しています。
例えば、動画共有サイトやSNS、匿名性の高いチャットアプリ、ライブ配信サービスなどを通じて、青少年がアクセスする機会は「日常的」になっています。特にスマートフォンの普及により、保護者の目の届かない場面での視聴が可能になっていることも、利用の敷居を下げている一因でしょう。

そして、性別による違いも見られます。
一般的に、男子は女子よりもポルノコンテンツ視聴頻度が高い傾向があり、意図的に検索・視聴する割合も高いことが報告されています。一方で、女子もSNS上での非意図的な曝露や、恋人や友人とのやり取りの中でポルノコンテンツに接触する機会があるとされており、「男子は積極的に見る」「女子は偶発的に触れる」という二分法では捉えきれない実態があることも明らかになっています。

さらに、ポルノコンテンツ視聴が一時的な関心にとどまらず、「日常的な習慣」として定着しているケースや、「毎日見ないと落ち着かない」というような利用に発展している若者も存在します。ある研究論文では、青少年の約4.2~11.2%が、ポルノコンテンツに対して「自分では利用をコントロールできていない」(=視聴せずにはいられない)傾向を示していると報告されました(文献1)。

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