男子小中高生に向けた包括的性教育を考える(2) 海外の先進事例にはどんなものがある?
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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包括的性教育の中でも重要な観点の一つが「男子へのアプローチ」。これまで女子中心に語られがちだった性教育を、男子もしっかり主体的に学ぶことが、社会全体のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)に大きく影響します。
今回は、先進的な海外事例を紹介しながら、日本でもどう活かせるのかを考えてみましょう。各国の先進事例を比較すると、男子自身の健康の課題だけではなく、「加害しない・支える側」へと変わることを目指している点が共通しているようです。
この記事でわかること
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海外の事例を参考にする意義
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学校教育における包括的性教育の先進事例:イギリス、スウェーデン、フィンランド
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地域コミュニティにおける包括的性教育の先進事例:米国、ブラジル、シエラレオネ
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重点テーマ別の実践的アプローチ:性的同意教育、バイスタンダー・インターベンション
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海外における成果と課題
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
海外の事例を参考にするメリットは?
日本における性教育は、性感染症や避妊といった医学的な情報提供が中心となり、生徒たちは受け身で学ぶ立場に置かれることが多いですが、近年世界的に広がっている「包括的性教育(Comprehensive Sexuality Education: CSE)」は、それ以上のものを目指しています。
包括的性教育では、単に身体や生殖に関する知識を伝えるだけではなく、人権やジェンダー平等、そして互いを尊重する健全な人間関係を学ぶことを目的としています。
この新しい流れの中で特に注目されているのが、「男子の積極的な関与」です。
従来、性教育は妊娠や性感染症の予防に焦点が当てられる傾向があり、男子は「加害のリスクを持つ存在」として注意喚起されるにとどまることが少なくありませんでした。しかし、欧州各国や米国、国際NGOの先進事例を見ると、男子を「支える側」「変化を担う主体」として教育に積極的に取り込む姿勢が明確になってきています。
では、海外各国ではどのような取り組みが行われ、どのような成果が確認されているのでしょうか。海外事例を学ぶことは、日本が単にマネをするためではなく、日本社会に合わせて「応用」できる材料を探すために役立つはずです。
社会全体の意識を変えるために、男子(男性)の意識と行動も変えていく。男子校での性教育などを通じて、私自身もこれが非常に重要だと感じていますので、その可能性を具体的に考える一歩としてぜひ最後まで読み進めていただければ幸いです。
海外の学校教育における先進事例
包括的性教育を社会に根付かせるには、まず学校教育が重要な役割を果たします。公的な場で男子も女子も一緒に学ぶことで、性に関する知識だけでなく、人権や関係性のスキルを平等に身につけることができるからですね。
ここでは、学校教育として包括的性教育の要素を制度化してきたイギリス、スウェーデン、フィンランドなどの事例を取り上げ、その特徴と成果を見ていきます。
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