卵巣に髪の毛や歯が溜まって腫れる「皮様嚢腫」ってどんな病気?
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女性の骨盤内に2つある「卵巣」。
これが、腫れてしまうことがあります。
「卵巣嚢腫」や「卵巣腫瘍」と呼ばれますが、その中でも比較的頻度の高い病気として「皮様嚢腫」というものがあり、これは卵巣に髪の毛や歯が溜まって腫れた袋ができてしまうものです。
ちょっとびっくりしてしまう病気ですが、今回は「卵巣嚢腫/腫瘍」の概要と「皮様嚢腫」についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
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卵巣嚢腫とはどんな病気か
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良性と悪性はどう違うか
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皮様嚢腫はどんな病気か(有病割合、原因、特徴など)
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皮様嚢腫の怖い合併症
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皮様嚢腫の悪性化リスク
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皮様嚢腫の検査・診断方法
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皮様嚢腫の治療法
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普段から気をつけてほしいこと
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
卵巣嚢腫とは?
卵巣嚢腫は、卵巣に液体や脂肪分を含む袋状の腫瘍ができる病気のことで、その多くは良性です。
卵巣腫瘍は
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良性
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境界悪性(中間型)
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悪性(=卵巣がん)
に分類され、嚢腫は主に良性の嚢胞性腫瘍を指します。
女性の一生涯で卵巣腫瘍が発生する確率は5~7%程度とされ、初期では自覚症状が乏しいため、定期検診や妊婦健診などで偶然に見つかることも少なくありません。
卵巣嚢腫にはいくつかの種類があり、代表的なものに
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漿液性嚢胞腺腫(サラサラの水が溜まる嚢腫)
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粘液性嚢胞腺腫(ねばねばした粘液が溜まる嚢腫)
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チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)
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成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
などがあります。
生成AIを用いて著者作成。
これらは年齢を問わず発症することがありますが、漿液性・粘液性嚢胞腺腫は幅広い年代に、皮様嚢腫やチョコレート嚢胞は比較的若い世代の女性に多い傾向があります。
なお、卵巣嚢腫と診断されても、月経周期に伴う一過性の「機能性卵巣嚢胞」である場合もあり、その場合には病気ではないので、時間を置いて自然に消失することがあります。
良性と悪性の違いって?
卵巣腫瘍は良性・境界悪性・悪性に分かれ、良性腫瘍の多くはゆっくり増大し症状がほとんどないのが特徴です。一方、悪性腫瘍(卵巣がん)は進行すると急速に大きくなることが多く、下腹部の違和感やお腹の張り(腹部膨満感)などの症状が現れやすくなります。
例えば「卵巣がん」では腫瘍が巨大化したり腹水が溜まったりして、お腹の膨らみや膨満(圧迫)感をきっかけに受診されるケースがあります。
診断には超音波検査がまず基本で、嚢腫内に透明な液体しかない場合は良性の可能性が高いですが、内部に固い部分(充実成分)が混在する場合や、血流が豊富な場合は、悪性や境界悪性を疑います。必要に応じてMRI検査やCT検査、血液検査(CA125などの腫瘍マーカー)を併用して精密検査を行います。
ただし、画像検査や腫瘍マーカーだけで良性・悪性を完全に確定することは難しく、最終的には摘出した腫瘍の病理組織検査で確定診断が行われます。
この記事は無料で続きを読めます
- 皮様嚢腫ってどんな病気?合併症や悪性化は?
- 皮様嚢腫の検査・診断方法は?
- 皮様嚢腫を治す方法は?
- 普段から気をつけてほしいこと
- マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
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