性教育シリーズ① 〜自分はどこから生まれてきたの?〜
性教育シリーズの一回目として、今回は子どもに「自分はどこから生まれてきたの?」と聞かれた場合の答え方を考えていきましょう。
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
今回は無料登録で全文読める記事です。メールアドレスをご登録いただくだけで最後まで読むことができます。
なお、一部の記事(より専門的なもの、私自身の思いを語るものなど)は、サポートメンバー(有料登録読者)に限定してお届けします。サポートメンバー登録いただくと過去の全ての記事を読めるだけでなく、スレッドでの意見交換や、オンライン交流イベントにご参加いただけます。本ニュースレター継続の励みにもなりますので、ご登録いただけると大変嬉しいです。詳細はこちらをご覧ください。
この記事でわかること
-
「包括的性教育」とはどういうものか
-
伝えるときのポイント(1) 小さな子どもは「エロ」の概念がない
-
伝えるときのポイント(2) 嘘をつかない
-
伝えるときのポイント(3) 無視・はぐらかすのはNG
-
伝えるときのポイント(4) 不必要に詳細すぎる説明はしない
-
具体的な答え方の例(4〜8歳くらいの子どもに聞かれた場合を想定)
「包括的性教育」のおさらい
日本で多くの人がイメージする「性教育」は、「性に関する知識やスキル」として、妊娠・出産の仕組みや避妊、性感染症予防を教える(学ぶ)ことかもしれません。
しかし、「包括的性教育」はこれとは異なる概念です。国際的に広く認知・推進されている、「性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ」ための重要な概念なのです。英語ではcomprehensive sexuality education (CSE) などと表現されます。
詳細は以前の記事にまとめたので、まだ読んでないという方はぜひ先にご覧ください。
今回のテーマは、子どもに「自分はどこから生まれてきたの?」と聞かれた際の答え方なので、まさに「妊娠・出産」に関することですが、それには「セックス」がどうしても関係してきます。また、最近では不妊治療の「体外受精・胚移植」で妊娠するケースも増えてきていますので、どこまでどう子どもに話せばいいか悩んでしまうのも仕方ないでしょう。
なお、今回は小学校入学前から小学校低学年くらいの子どもからの質問を想定しています。では、まず4つのポイントをお伝えしていきます。そして最後に回答例を紹介します。
ポイント(1) 小さな子どもは「エロ」の概念がない
小学校に入る前や小学校低学年の時期では、基本的に子どもは「エロ(性的な興奮)」の概念を持っていません(もちろん中にはとても早熟な子どももいますがここではいったん置いておきます)。
これは、通常、子どもの二次性徴の開始年齢は男子では10〜13歳、女子では8〜12歳頃であるためです。8歳の女の子がすぐに性的なことに興味を持ち始めるわけでもありません。
つまり、「自分はどこから生まれてきたの?」という質問を受けたときに、大人が焦ってしまったり困ったりするのは、
どう赤ちゃんが生まれるか
↓
まず妊娠する
↓
その前にセックスする
↓
え、そんなこと言っていいの!?
という思考回路を描いてしまうからではないでしょうか。
しかし、聞いてきた子どもにはそんな概念はないですし、仮にセックスのことを聞いても興奮して「自分もセックスしたい!」と思うことはありません。また、「エロい=悪いこと・恥ずべきこと」というイメージも本来間違っており、大人がそういう印象を子どもに与えてしまうことは長期的な目線で不利益になるでしょう。
つまり、子どもは「そのままの意味を理解しようとする」ので、文字通りの解釈を伴う説明が適していることになります。
ポイント(2) 嘘をつかない
この記事は無料で続きを読めます
- ポイント(3) 無視・はぐらかすのはNG
- ポイント(4) 不必要に詳細すぎる説明はしない
- 具体的な答え方の例
すでに登録された方はこちら