日本に求められる性教育 〜自身の過去も踏まえて〜
こんにちは。本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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性教育が日本の未来を大きく左右すると考えるワケ
私は産婦人科医として働く中で、様々な患者さんと向き合ってきました。
一人一人に対して、困っている状況を確認し、必要な検査や診察を行い、適切な治療を提供します。誰一人として全く同じ人はいませんが、困っていることや解決方法はある程度のカテゴリーに分けて考えることもできます(そうすることで体系的な医療を提供できます)。
ちょうど専門医を取得して少し経った頃、公衆衛生大学院に進学しました。
そこで、これまで一人一人に対して提供してきた医療を「俯瞰的な目線」で考える機会を持ちました。
そうすると、例えば以下のように、いろいろな病気や困りごとの上流には、それぞれ「社会的課題」があるのだと改めて気付かされました。
・子宮頸がんで亡くなる若年女性、子宮頸部異形成で頻回な通院が辛い働き盛りの女性
→HPVワクチンの接種がほとんど普及していない
・意図しない妊娠で不安を抱えながら受診する10代女性、4人目を妊娠したが経済的に出産は難しいと悩む40代女性
→確実性の高い・女性に主導権のある避妊法が利用されていない
・月経痛が重くて朝の通勤電車で倒れ救急搬送される女性、月経量が多量なのに普通だと思い込んで重症貧血となっていた女性
→月経痛や過多月経の治療必要性についてきちんと知られていない
さらには、こうした「上流にある社会的課題」の多くは、その根本に「適切な性教育の不足」があるのだと思うようになりました。
つまり、日本でもっとしっかりした性教育が普及し、若年のうちから性別にかかわらず適切な知識を持つことができれば、産婦人科に不安や辛さを抱えて受診する女性は大きく減らせるはずなのです。
これが、私が「性教育が日本の未来を大きく左右する」と考える一つの理由です。
著者作成
*なお、上記の課題の原因には「緊急避妊薬への迅速な入手が難しい」「経口避妊薬が自費となっており購入できない」など、社会・医療システムによるものも存在しています。これにはまた別のアプローチが必要ですが、より広い目線で考えれば「適切な性教育を受けた人が政治家や省庁の要職に多くつくことでシステムは変わっていく」とも考えられ、やはり根本的に性教育は大きな影響を持っていると私は思っています。
包括的性教育とは
このニュースレターをお読みの方には、私の普段の情報発信を見て下さっている方もいらっしゃると思いますが、ここで改めて「包括的性教育」についての概要とポイントを紹介しておきます。