子宮内膜症・子宮腺筋症が妊娠に与える影響 〜驚きのデータと効果的な対策とは〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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子宮内膜症と子宮腺筋症という病気を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これらは、妊娠や不妊に不利な影響をおよぼす婦人科疾患であることがわかっています。
今回は、近年の研究論文からわかってきた驚きの知見と、効果的な対策について徹底解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
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子宮内膜症と子宮腺筋症とはどのような病気か
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子宮内膜症・子宮腺筋症がもたらす不妊や妊娠自体への影響
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子宮内膜症・子宮腺筋症がもたらす不妊治療・分娩への影響
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特に病気が進んでいる場合にどうなるのか
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最新の研究でもまだ不明点が多いワケ
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妊娠がわかった際にどう対処すべきか
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そもそも子宮内膜症や子宮腺筋症にならないようにするには
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
子宮内膜症と子宮腺筋症とはどのような病気?
子宮内膜症と子宮腺筋症は、いずれも「子宮内膜(子宮の内側を覆う膜)」に関連する疾患ですが、発生する部位や症状、治療方法が異なります。女性ホルモンの影響を強く受けるため、月経痛や過多月経、妊娠・出産への影響など、日常生活の質(QOL)に大きく関わる疾患なんですね。
まずは、それぞれの特徴と診断・治療のポイントをざっと見ていきましょう。
1. 子宮内膜症(Endometriosis)
1-1 定義と病態
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定義:子宮内膜組織が、本来あってはいけない骨盤内(卵巣や子宮の外表面、腸管周囲など)に発生・増殖する疾患。
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病態:本来、月経時に子宮内膜は剥がれて体外に排出されますが、骨盤内に飛び散った内膜組織の断片が、月経周期に合わせて出血・炎症を繰り返すことで、癒着やチョコレート嚢胞(卵巣内に古い血液がたまったもの)を形成します。
1-2 主な症状
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月経痛(生理痛):強い下腹部痛や腰痛。鎮痛薬で抑えにくいケースも。
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性交痛:骨盤内に癒着(ゆちゃく)があると、性行為時の疼痛を感じやすい。
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排便痛・排尿痛:腸管や膀胱周囲に病変がある場合。
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不妊:卵巣や卵管周囲の炎症・癒着のため排卵や受精が妨げられることがあります。
1-3 診断
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内診:子宮を動かすことで強い痛みが出る場合は、子宮周囲の癒着が疑われます。
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画像検査:経腟超音波検査で卵巣チョコレート嚢胞を確認したり、MRIで骨盤内癒着や骨盤深部の病巣を評価します。
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腹腔鏡検査:病変を直接観察し、生検により確定診断できます。実際は、治療(腹腔鏡手術)と同時に行うことが多いです。
1-4 治療
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ホルモン療法:ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン薬 [LEP]、黄体ホルモン製剤 [ジエノゲスト])やGnRHアゴニスト(黄体ホルモン抑制薬)で月経をコントロールし、病変の活動を抑制。
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鎮痛薬:主にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)で痛みを緩和。
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腹腔鏡下手術:チョコレート嚢胞の摘出や癒着剥離を行い、症状緩和と妊娠率改善を目指す。
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子宮・卵巣摘出術:重症例で繰り返す場合や高齢で妊娠希望がない場合に選択。
なお、子宮内膜症が生じる詳しいメカニズムは以下の記事で解説してあるので、ご興味があればぜひ読んでみてください。
2. 子宮腺筋症(Adenomyosis)
2-1 定義と病態
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定義:本来は子宮の内面を覆うように存在する内膜組織が、子宮筋層(筋肉の層)の中にも侵入・増殖する疾患。
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病態:子宮筋層内で子宮内膜組織が増殖し、月経時に筋層内で出血・炎症を起こすため、子宮全体が腫れて大きく硬くなってしまいます。
2-2 主な症状
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過多月経:子宮が腫れてしまい、月経量が多くなる。
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月経痛:子宮が大きくなることで筋収縮が強くなり、痛みを伴いやすい。
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不妊:子宮の形態が変化することや炎症の存在により、不妊のリスクを上げる場合があります。
2-3 診断
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経腟超音波検査:筋層内の異常な陰影や子宮の腫大を確認。
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MRI:筋層内の高信号域(内膜組織)を描出し、診断の確度を高められます。
2-4 治療
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ホルモン療法:ピルや黄体ホルモン製剤で月経量・痛みを軽減。
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GnRHアゴニスト:一時的に閉経後のような状態にして症状を抑える。
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子宮動脈塞栓術(UAE):子宮への血流を一時的に遮断し、腺筋症組織を縮小。(ただし標準的治療ではありません)
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子宮全摘出:症状コントロールが困難、かつ妊孕性を望まない場合に最終的な選択肢となります。
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コラボ実績
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