気圧による体調不良、なぜ起こる? 〜男女差や対処法まで徹底解説〜
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私たちの身体は、常に周囲の大気圧に適応しながら微調整をしています。しかし、低気圧の接近や急激な気圧変動が起こると、一部の人々は「天気痛(気象関連痛)」などと呼ばれるさまざまな体調不良を経験します。
本記事では、主に生理学的な視点から、なぜ気圧の変化が身体に影響を及ぼすのか、主な症状と世代・男女別傾向、日常生活でできるセルフケアや工夫などについて、わかりやすく徹底的に解説します。
この記事でわかること
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気圧変化による症状:生理学的メカニズム
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主な症状と世代・男女別の傾向
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女性で症状が出やすい要因について
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日常生活でできるセルフケアと職場・家事環境の工夫
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梅雨・台風シーズン対策と気象情報の賢い活用
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
気圧変化による「天気痛」の生理学的メカニズム
天気や気圧によって、体調がめっちゃ悪くなる。。
そんな風に感じている人は少なくないかもしれません。特に低気圧だと体調が悪化する人は結構多い印象です。
まず、「天気痛」というのは正確な学術用語ではない(と私は認識している)のですが、天気や季節の変化がきっかけとなって痛みが悪化する病態は「気象関連痛」あるいは「天気痛」と呼ばれることがあり、医師もそのような用語を使うことがある、というのが実際のところです。
まずは、気圧と体調の関連について生理学的なメカニズムを考えてみましょう。
1. 大気圧と身体のバランス
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大気圧とは?
地球を取り囲む空気の重さによって生じる圧力のことです。海抜0m(1気圧=約1013hPa)を基準に、低気圧では値が下がり、高気圧では上がります。 -
身体内の圧力との関係
私たちの体内(関節腔、内耳、頭蓋内など)には液体や気体が存在し、外側の大気圧と均衡を保っています。外部の圧力が下がると、内部との圧差が生じ、組織や血管、神経が刺激されやすくなります。
2. 症状が出る(体調が悪くなる)主なメカニズム
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血管拡張による頭痛
気圧低下で血管が拡張しやすくなり、頭蓋内の血管や周囲の神経が刺激されることで頭痛が起こります。片頭痛をもつ患者さんでは、気圧が5hPa以上低下すると頭痛発作が誘発されやすいことが明らかになっています(文献1)。 -
自律神経の乱れ
体内の「圧受容体(バロレセプター)」が大気圧の変化を感知すると、自律神経(交感神経/副交感神経)の働きに影響し、動悸やめまい、吐き気などが生じやすくなるとされています。 -
内耳・平衡器官への影響
内耳(耳のかなり奥にある骨の中に埋もれている部分)には気圧変化を感知する構造があり、気圧の揺らぎが前庭系を刺激して平衡感覚が乱れ、めまいや耳鳴りを引き起こします。 -
関節内圧の変化
関節などの内部にある組織液も大気圧の低下でわずかに膨張し、神経が刺激されることで「関節痛」「古傷のうずき」が生じることがあると考えられています。
3. 個人差が生まれる理由
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基礎疾患の有無
片頭痛や関節リウマチなどの慢性疾患があると、気圧変化の影響を受けやすくなり、実際に痛みが出る、体調が悪化するという経験のある患者さんは多いようです。 -
気圧に敏感な体質
乗り物酔いしやすい人や、自律神経が過敏な人は、気圧による影響を感じやすい傾向があります。 -
ホルモンバランス
女性ホルモンの変動もさまざまな体調に影響するため、同じ気圧変化でも症状の強さに差が出ることがあると考えられます(詳細は後ほど解説します)。
以上のようなメカニズムにより、いわゆる「天気痛」といったような体調不良や痛みが生じると考えられるんですね。人体の9割以上は水でできているのも事実ですので、大気圧の影響を受けても無理はない、ということはなんとなくご理解いただけるのではないでしょうか。
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- 主な症状と世代・男女別傾向について
- なぜ女性は敏感?男女差の背景要因とは
- 日常生活でできるセルフケアと工夫は?
- 梅雨・台風シーズン対策と気象情報の賢い活用を!
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