閉経時期以降の「抜け毛」について知っておいてほしいこと
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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「最近、髪が薄くなってきた気がする」
「分け目が目立つようになった」
こんなご相談を、更年期世代や閉経後の女性から受けることが多くあります。
特に50代前後の女性では、こうした髪の悩みは決して珍しいものではありません。
実は、閉経期のホルモン変化は、心臓や骨だけでなく、髪にも大きな影響を及ぼしています。
今回は産婦人科医の立場から、閉経と髪の関係について、最新の知見を交えながら分かりやすくお伝えします。
知識として、若年世代の方々にも楽しんでいただけるのではないかと思います。
この記事でわかること
閉経で体に起きるホルモン分泌の変化
髪の成長サイクルのしくみ
閉経期の脱毛はなぜ起きるのか
閉経期に多い3つの脱毛のタイプ
「多毛」にもホルモンが関係している
日常でできる髪のケア:4つのポイント
マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
閉経とホルモン分泌の変化
月経が12ヶ月以上止まった状態を「閉経」と呼び、日本人女性の平均閉経年齢は約51歳です。通常、45歳から55歳の間に閉経を迎える方が多く、この時期を「更年期」または「周閉経期」と呼びます。
閉経の数年前から、月経周期が不規則になり、ほてりや寝汗、気分の変動などのいわゆる「更年期症状」が現れ始めます。
閉経は、卵巣の中にある卵胞が徐々に減少し、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌が低下することで起こります。
エストロゲンは卵巣だけでなく、脂肪組織や皮膚など体のさまざまな場所でも作られています。皮膚にはエストロゲンの受け皿となる「受容体」が数多く存在しており、肌の潤いや弾力性、そして髪の健康にも深く関わっています。
閉経前の女性では、月経周期の初期に血中エストロゲン濃度は低く、排卵期には上昇しますが、閉経後には急減し、その後は生理的な作用をほとんど失ってしまいます。
つまり、エストロゲンは、単に月経や妊娠に関わるだけではありません。実は、肌の潤い、血管の柔軟性、骨密度の維持、そして毛包(髪の根元にある組織)の健康にも重要な役割を果たしているんですね。
そのため、エストロゲンの減少は、体温調節、気分、睡眠の質、髪や肌の質感など、全身にさまざまな変化をもたらします。
髪の成長サイクルのしくみ
髪の毛は一定のリズムで生え変わっており、
成長期
退行期
休止期
という3つの段階を繰り返しています。
成長期は2〜6年ほど続き、全体の約85〜90%の毛包がこの段階にあります。この時期に髪が実際に伸び、黒く太い毛が作られます。
次の退行期(約2〜4週間)では、髪を作る細胞の活動が弱まり、毛包の下部が縮んで上に移動します。
その後、髪の成長がほぼ止まる休止期(約3ヶ月)に入り、最終的に「脱毛期」と呼ばれる段階で古い毛が抜け落ちます。
エストロゲンには、この成長期を長く保ち、抜けにくい髪を維持する働きがあります。エストロゲンが豊富な時期には、成長期の髪の割合が高く、髪全体のボリュームが保たれやすくなります。
実際、妊娠中はエストロゲンの影響で髪がしっかり生えることが多いのですが、出産後にホルモンが急に減ると、成長期の髪が一斉に抜け落ちる「分娩後脱毛」が起こることがあるのも、このメカニズムによるものです。
*産後の抜け毛については以下をご参照ください。
一方、男性ホルモン(アンドロゲン)も髪の成長に影響を与えます。
テストステロンは体内で「5α-リダクターゼ」という酵素によって、より強力なホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変わります。
DHTは部位によって異なる作用を示し、脇や陰部では毛を太く濃くする一方、頭皮では逆に毛包の働きを抑え、毛を細くしてしまう性質があります。これが、いわゆる脱毛症の主な原因の一つとなっています。
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