出産のときにお腹をグイグイ押されるのは普通なの?安全性は?

今回は、分娩時にお腹をグイグイ押す「クリステレル法(子宮底圧迫法)」を解説します。
重見大介 2026.03.27
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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「出産のときに、なかなか赤ちゃんが出てこないから医療者にお腹をグイグイ押されて苦しかったし不安だった。。」

そんな体験談を耳にすることがあります。

「お腹を上から押された」というのは、多くの場合、分娩第2期(子宮口全開大〜赤ちゃんが生まれるまで)にお腹側から子宮へ圧を加えて娩出を助けようとする「子宮底圧迫法(いわゆるクリステレル胎児圧出法)」を指します。

これはどんな方法で、どのくらい実施されるもので、メリットや危険性はどうなのか、国内外では推奨されているものなのか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。詳しく解説していきます。

そして、私自身の本音も書きますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること

  • 出産の大まかな流れと各段階の時間の目安

  • 難産の定義と原因

  • クリステレル胎児圧出法とはどんなものか

  • メリットと危険性

  • 日本の診療ガイドラインでの扱いや推奨度

  • 海外や文献での扱いや推奨度

  • 産婦人科医としての本音

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

***

出産の大まかな流れと各段階の時間の目安

まず、出産のおおまかな流れを確認しておきましょう。

分娩は一般的に、

  • 第1期(子宮口が完全に開く)

  • 第2期(子宮口全開大〜児娩出)

  • 第3期(児娩出〜胎盤娩出)

に区分されます。

出産直後は出血などの急変が起こり得るため、少なくとも2時間程度はしっかり状態を観察します。

所要時間は個人差がかなり大きいです。

低リスクの自然分娩を対象にした系統的レビューでは、(定義差はあるものの)活動期(例:子宮口4〜10cm)の中央値は

  • 初産で約4〜6時間台

  • 経産で約2〜4時間台

  • 95%の人は初産で15〜17時間以内

との報告があります(文献1)。
ただ、WHO(世界保健機関)は「通常は10〜12時間を超えない」としています(文献2)。

第2期について、WHOは「初産は通常3時間以内、経産は通常2時間以内で終了することが多い」と説明しています(文献2)。

第3期は、順調であれば概ね10分以内に完了します。もし胎盤が30分以上出ない場合は、医療的介入を検討する必要が生じます。

難産の定義と原因

日常語の「難産」は、医学的には主に
「分娩が遷延している(通常より遅れている)」
「分娩が停止している」
「胎児機能不全(胎児の元気がなくなっている状態)が疑われる」
などの状態を含んだ、やや幅の広い表現になります(文献3)。

ただ、時間の基準はあまり決まっていません。

一般的に用いられるものとして、

  • 第1期:初産30時間以上/経産15時間以上かかっているが有効陣痛に至らず分娩が見込めない

  • 第2期:有効陣痛があるが2時間以上進行していない

が「遷延」の目安です。

一方、産科の診療ガイドラインでは、第2期遷延の「一般的基準」として初産2時間・経産1時間としつつ、その時間を超えてもすぐに帝王切開をしないことで最終的な帝王切開率が低下したという研究報告にも触れ、「母児の状態が良好なら経過観察が選ばれ得る」としています(文献3)。

では、難産となる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
分娩進行には、以下の3つの要素が影響します。

  • 陣痛・いきみ(娩出力)

  • 赤ちゃんの向きや大きさ

  • 産道(通り道)

ただ、分娩遷延・分娩停止は複数の要因が絡むものであり、単一の主要因を決めることは難しい、とする研究報告もあります(文献4)。
臨床的にも、これには納得します。

したがって、難産の対応は「所要時間」だけではなく、胎児心拍、内診所見(赤ちゃんの下降度や頭の回旋状況など)、感染や出血リスク、母体の疲労などを総合的に考慮して、待機/分娩促進/急速遂娩(器械分娩や帝王切開)を選ぶことになります。

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