女性の健康課題について、企業や職場の管理職が知っておかないとまずい8つのこと
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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「女性の健康課題」と聞くと、月経痛や更年期症状など、個人の体調の話だと受け止められることがあります。
しかし、企業や職場の管理職にとって、これはもはや個人の問題だけではありません。月経、不妊治療、妊娠・出産、産後、更年期、婦人科がんなどは、働き方、欠勤、集中力、キャリア形成、離職、管理職登用、心理的安全性などに直接関わるテーマです。
経済産業省は、女性特有の健康課題について、「業務効率や就業継続に大きな影響を与え、経営者が十分に理解して職場環境を整備することで改善が期待される重点テーマ」だと整理しています。
さらに、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療による労働損失等の経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円と試算されています。
つまり、女性の健康支援は、福利厚生の一部ではなく、健康経営、人材定着、生産性向上、女性活躍推進に関わる経営課題だと言えるでしょう。
本記事では、産婦人科医の立場から、人事担当者や管理職が知っておくべき8つのポイントを整理します。
きちんと知っておかないと、ご自身もチームとしても痛手になり得ると思います。この機会に、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
1. 月経痛やPMSは「よくあること」でも、我慢して当然ではない
2. 生理休暇は「特別扱い」ではなく、法律上の制度である
3. 不妊治療は予定を立てにくく「キャリア上の負荷」になりやすい
4. 妊娠中、「安定期なら大丈夫」とは限らない
5. 産後・復職後のしんどさは、育休明けにも続いている
6. 更年期症状は、管理職世代・リーダー層の活躍に直結する
7. 何気ない一言が、相談しにくさやハラスメントにつながる
8. 女性の健康支援は、組織全体を強くする人材戦略である
まとめ:管理職に必要なのは、医学知識よりも「正しく受け止める力」
1. 月経痛やPMSは「よくあること」でも、我慢して当然ではない
まず知っておきたいのは、月経に伴う不調は非常に身近なことでありながら、職場では見過ごされやすいということです。
厚生労働省の資料では、月経周期に伴う不調は働く女性の約7〜8割が経験しているとされ、生理による不快症状を我慢している人は66.4%、一方で生理休暇を請求した女性労働者の割合は0.9%と示されています(文献1)。
制度があっても、使える雰囲気がなければ実質的には機能しないことがわかりますね。
医学的には、月経痛が強く、下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、嘔吐などによって日常生活に支障をきたす場合、「月経困難症」と診断されます。
原因がはっきりしない機能性月経困難症もありますが、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの婦人科疾患が背景にあることもあります。
また、月経開始3〜10日前から気分の落ち込み、イライラ、集中力低下、眠気、むくみ、頭痛などが出て、月経開始とともに軽快する場合は月経前症候群(PMS)、精神症状が特に強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)が疑われることがあります。
厚生労働省のサイトでも、月経困難症やPMSについて、症状がある場合は産婦人科医への相談を考えるよう勧められています。
管理職が避けたいのは、
生理くらいで大袈裟な
女性なら慣れているはずでしょ
他の人は休んでいないよ
といった考え方や発言です。
月経に関する症状には大きな個人差があり、同じ人でも月によって症状の重さは変わります。本人の努力や根性で解決する話ではありません。
適切な治療として、鎮痛薬、低用量ピル、黄体ホルモン製剤、子宮内黄体ホルモン放出システム、漢方薬などが選択肢になる場合もあります。
職場としてすべきことは、診断名を聞き出すことではなく、休憩、在宅勤務、時差出勤、短時間勤務、会議時間の調整、通院しやすい制度などを整えることです。
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2. 生理休暇は「特別扱い」ではなく、法律上の制度である
生理休暇について、現場ではまだまだ誤解が少なくありません。
有給休暇で対応すればよいのでは
診断書が必要なのでは
毎月取られると困る
などと感じている管理職の方もいるかもしれませんね。
しかし、生理休暇は労働基準法第68条に定められた制度です。
厚生労働省は、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合、その者を生理日に就業させてはならない」と説明しています。また、休暇の日数は、症状や就労困難の程度が個人により異なるため、就業規則などで限定できないとされています。
ここで重要なのは、生理休暇を「女性だけに与えられた優遇」と捉えないこと、です。
これは、就業が困難な状態にある労働者を無理に働かせないための安全配慮に近い制度です。一方で、制度名が直接的で申請しづらい、男性上司に言いにくい、同僚に知られたくない、無給だと使いづらい、といった声も多く聞かれます。
厚生労働省の資料でも、「F休(FemaleのF)」「ウェルネス休暇」など、制度名を工夫することで申請時の抵抗感を減らす例が示されています。(文献1)
また、人事や管理職に求められるのは、制度の存在を知ることだけではありません。申請を受けたときに、理由を細かく聞き出したり、本人の体調を評価したりしないことが大切です。
「承知しました。業務上必要な調整を一緒に確認しましょう」
と受け止める姿勢を持つだけで、当事者の心理的安全性は大きく変わります。
また、生理休暇に限らず、体調不良、不妊治療、更年期症状、家族の通院付き添いなどにも使える名称の休暇制度を設計することで、特定の健康課題を申告しなくても誰もが使いやすい仕組みにできます。
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