【後編】避妊について徹底考察!〜未来の避妊法:男性用避妊、開発中の新技術〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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避妊法は人類の歴史とともに発展し続けており、現在も新しい避妊法が開発され続けています。
前編では、避妊法の歴史と、現在私たちが利用できる安全で効果的な避妊法(近代的避妊法)について網羅的に解説しました。
後編では、新しい男性用避妊法や、研究開発の続く未来の避妊法について解説していきます。知らなかった知識もきっとあるはずですので、ぜひ最後までご覧いただけると嬉しいです。
この記事でわかること
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研究開発の進む男性用の新しい避妊法
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研究開発の進む女性用の新しい避妊法
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免疫を用いた避妊法の研究開発とはどんなものか
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さらに未来の避妊法にはどのようなものがあるのか
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
研究開発の進む男性用の避妊法:ホルモン性避妊薬
男性の避妊方法として、現在はコンドームとパイプカットしか普及していませんが、ホルモンを利用する避妊法の研究は長く続けられています。
ホルモン性避妊の最大の特徴は、使用中は射精液中の精子の量が極端に減り、使用をやめれば精子数が元に戻る「可逆性」(=元に戻せる)にあります。100年近く前の1939年に、意図的に可逆的な乏精子症にすることを動物実験で達成したことに始まり、テストステロンなどの男性ホルモンを外部から投与することで精子の数を一時的に減らす手法が研究開発されてきました。
この方法は、脳からの「精子を作れ」という指令(FSHとLHというホルモン)をブロックすることで機能します。特にLHホルモンが減ると、精巣内のテストステロンが不足し、精子の生成が大幅に減少します。これまでに、経口薬(つまりピル)、筋肉内注射、皮下注射、インプラント(皮膚の中に埋め込む製剤)、経皮ゲル(皮膚に塗ることで有効成分を体内に吸収させるジェル状の製剤)などのさまざまな手法での投与方法が研究されています。
現在では、男性用避妊ゲル(NES+TES)が注目されています。これは脳のホルモンを司る視床下部と下垂体と性腺をつなぐ働きを抑えることで避妊します。臨床試験では、88-89%の人が効果的な避妊レベル(精子数100万/ml未満)を達成しました。このゲルは肩に塗るだけで利用でき、主な副作用はニキビ程度で、重い健康リスクは現在のところ報告されていません。
最新の研究では、月に1回の注射で効果が持続する「DMAU」という薬剤の試験が進行中です。従来の方法に比べて「パートナーとそれぞれ主体的に避妊ができ、その責任を共有できる」点が評価されており、今後5-7年の実用化を目指して研究が加速しているようです。
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