社会的卵子凍結の最新データ 〜卵子利用率や出生率の実際、成功因子とは〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
今回はサポートメンバー限定記事です。最後までご覧になりたい方はサポートメンバー登録をお願いいたします。
キャリアと家族計画を両立させるための一つの手段として注目される「社会的な卵子凍結」。しかし、凍結した卵子はどれだけ使われ、出産につながっているのでしょうか。
本記事では最新かつ大規模な研究データをもとに、卵子利用率、年齢別の出産率など、知っておきたい情報を専門的視点で読み解きます。成功のカギとなる年齢と凍結卵子数、費用対効果やキャリアへの影響も含め、多面的に深掘り解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
-
「社会的卵子凍結」とはどんなものか
-
凍結した卵子は実際どのくらい使われているのか
-
年齢と卵子数が左右する最終的な出産率の現実
-
卵子凍結による女性のキャリア継続やジェンダーバランスへの影響
-
安全性・有効性、費用対効果、エビデンスの限界をどう解釈すべきか
-
マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
「社会的卵子凍結」とはどんなもの?
社会的(計画的)卵子凍結(Planned Oocyte Cryopreservation: POC)は、手術や抗がん剤など医学的理由のない女性が、将来の妊娠の可能性を残す(高める)ために「受精前の卵子を凍結保存しておく」という手法です。
キャリア形成の多様化やパートナーシップの変化を背景に近年注目されていますが、そのプロセスや成功率の現実は意外と知られていません。まずは、「社会的卵子凍結」とはどんなものか説明してみます。
POCの基本ステップ
-
相談・検査:ホルモン値や卵巣予備能(AMHなど)を確認し、メリットとリスクを説明します。
-
排卵誘発と採卵:短期間のホルモン注射で複数の卵子を成熟させ、日帰り処置で卵子を採取します。
-
卵子の凍結:液体窒素で急速凍結し、長期保存します(理論上、保存期間に上限なし)。
-
(将来の)融解・体外受精:必要になった時点で卵子を融解し、体外受精後に子宮へ戻します。
費用と保険適用
-
日本では自由診療となっており、採卵〜凍結で約50〜70万円、保管料は年間数万円が目安なことが一般的です。
-
助成制度は自治体や企業福利厚生によって差があり、東京都や一部の企業(サイバーエージェント、メルカリなど)では費用助成制度があります(公開時点の情報)。
社会的意義と指摘されている課題
-
キャリア継続やジェンダー平等を支える手段として期待される一方、成功率は年齢に依存し、費用負担が大きいという現実があります。
-
「凍結すれば将来は安心」という誤解がまだ少なくなく、期待できる確率と限界を知っておくことが重要です。
-
こうした選択肢があること、そしてこうしたことをきっかけにライフプランを真剣に考え、情報収集や行動に移すこと自体には、とても意義があるでしょう。
2023年時点で書いた記事もあります。卵子凍結のメリット・デメリットをより詳細に知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績

