男女におけるマスターベーションの意味や近年の変化は?最新の研究論文からわかること

今回は男女のマスターベーションについて学術的に考察してみます。
重見大介 2026.08.09
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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マスターベーション(自慰行為)は、多くの人が経験する身近な性的行動です。
ただ、
「するのは健康によくないのでは」
「パートナーがいるのにするのは、関係がうまくいっていないから?」
「男女で意味が違うの?」
など、あまり人には聞けないし正解もわからない疑問を抱いている人は少なくないかもしれません。

今回は、英国の大規模な全国調査を分析した新しい研究をベースに、日常的なマスターベーション実施率はどのくらいなのか、女性と男性でどのような共通点や違いがみられたのか、などを丁寧に読み解いてみます。

この記事でわかること

  • マスターベーションと健康の関係

  • マスターベーションに関するよくある誤解

  • 英国の調査研究:日常的な実施率や変化、性別や年代の違い

  • 女性は「性生活をより豊かにするため」、男性は「性行為の代わり」という説は本当なのか

  • 性生活における不満や性機能の問題と、マスターベーションの関係

  • パートナーがマスターベーションをしていることをどう考えればいいのか

  • 性に対する考え方とマスターベーション実施の関連

  • 今回の研究結果から最も学びになるメッセージは何か

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

***

マスターベーションは「性の健康」とどう関係する?

マスターベーションとは、一般に、自分の身体、とくに性器などに触れたり刺激を加えたりして、性的な心地よさや興奮を得る行為を指します。

オーガズムに至る場合もあれば、至らない場合もあります。手指を使う人、性のために作られた器具(いわゆる「大人のオモチャ」など)を使う人、性器以外への刺激を含める人など、その方法はさまざまです。

*オーガズムについてもきちんと理解していくことが大事ですね。

まず押さえておきたいのは、「する人が正常で、しない人は異常」「回数が多いほど性欲が強い」といった単純な基準はないということです。

関心がない人も、ほとんどしない人も、定期的にする人もいます。同じ人でも、年齢、体調、妊娠・出産、月経周期、仕事の忙しさ、ストレス、服薬、パートナー関係などによって頻度は変化します。本人が望んでおらず、困ってもいないなら、しないことを問題にする必要はありません。

世界保健機関(WHO)は、性の健康を、「単に病気や性機能の問題がない状態ではなく、性に関する身体的・感情的・精神的・社会的なウェルビーイング」として捉えています(文献1)。

そこには、

  • 性や性的関係に対する肯定的で尊重ある姿勢

  • 安全で心地よい経験

  • 強制や差別、暴力を受けないこと

などが含まれます。

つまり性の健康を考えるうえでは、「何をするか」だけでなく、自分で選べているか、安全か、苦痛がないか、自分や相手の尊厳が守られているか、が重要ということですね。

少し医学的に整理してみましょう。

マスターベーションは、一人で行い、精液が腟や外陰部周辺に付着しなければ妊娠の可能性はなく、器具を人と共有しない限り性感染症のリスクも基本的にありません。自分が心地よいと感じる刺激や、反対に苦手な刺激を知るきっかけになり、パートナーに希望を伝えやすくなる人もいます。

英国NHSの情報でも、すべてのジェンダーにとって自然な行動であり、頻度は個人によって異なると説明されています(文献2)。

また、「将来の不妊につながる」「性器が変形して元に戻らなくなる」「体力や精力が失われる」といった俗説を裏づける医学的根拠はありません。ただし、強すぎる摩擦や長時間の刺激によって、一時的な赤み、腫れ、擦り傷、痛み、感覚の鈍さなどが生じることはあります。痛みを我慢せず、必要に応じて潤滑剤を使い、器具を性器に挿入する場合はちゃんと用途に合った製品を適切に使用しましょう。肛門に使用した手指や器具を、洗浄やコンドーム交換をせず腟や外陰部に用いることも感染予防のため避けましょう。

*思春期女子のマスターベーションに関してメリット・デメリットを医学的に解説した記事もあります。ご参照ください。

マスターベーションにおける問題を考える場合には、頻度そのものよりも、

  • やめたいのに我慢・コントロールできない

  • 睡眠や仕事、学業、人間関係に悪影響が及んでいる

  • 強い罪悪感や不安が続く

  • 刺激による痛みや出血がある

といった状況があるかどうかが重要です。困りごとがあれば、早めに産婦人科、泌尿器科、心療内科・精神科、性機能を扱う専門外来などに相談してくださいね。

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