思春期女子のマスターベーション 〜メリット・デメリットを医学的に徹底解説〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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マスターベーション(最近ではセルフプレジャーとも呼ばれたりしますね)は、思春期から始まる自然な自己探求の一環として、多くの若者が経験する行為です。しかし、社会的・文化的な影響により、罪悪感や「本当は良くないこと」という感情を抱くことも少なくありません。また、誤った方法で実施することで負の影響が生じてしまうこともあります。
今回は、思春期におけるマスターベーションの影響を科学的な視点から探り、そのメリットとデメリットについて考察します。性教育の一環としてまず大人が正しく理解しておくことが大切です。
この記事でわかること
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思春期に触れ始めることの多いマスターベーションの意味
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マスターベーションをたくさんすると良いのか悪いのか
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性器の自己イメージ形成とマスターベーションの関係
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マスターベーションに対する社会的・文化的な影響とその対応方法
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思春期におけるマスターベーションのメリットとデメリット
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
思春期に触れ始めることの多いマスターベーションにはどんな意味がある?
マスターベーション(自慰行為)とは、自分自身の体や性器を触れたり、刺激したりすることで、性的な快感を得る行為のことを指します。最近ではセルフプレジャーと呼ばれたりもします。この行為は、思春期を迎えた多くの若者が経験するものであり、性的な自己探求の一環とされています。民間企業が2018年に実施した「マスターベーション世界調査」では、日本人のマスターベーションの初体験年齢は14.6歳となっており、思春期に開始されることが多いことがわかります。(文献1)
最近では性についてのタブー視が薄れてきているように感じますが、マスターベーションについてはセックスに比べて話題にされることは少ない印象で、特に女性の場合は、周囲の目や社会的なプレッシャーから罪悪感や「本当は良くないこと」と感じることが多いとされています。
マスターベーションは、単に性的快感を得ることだけでなく、自分の体や性的な欲求を理解するための手段でもあります。特に思春期の時期には、第二次性徴とも呼ばれるように、体の変化やホルモンの影響で性への関心が高まることが自然です。この時期に、マスターベーションを通じて自分の体を知り、自分が何に快感を感じるのかを理解することは、健康な性的発達に大きなメリットをもたらします。
また、マスターベーションはストレス解消やリラックスの手段としても機能します。性行為に限らず、リラクゼーションや快感を得るための方法として、成人でも多くの人が日常生活に取り入れているでしょう。さらに、自分自身の体を知ることは、パートナーとの性行為において自分の欲求や境界線、嫌なことなどを明確に伝えることにつながります。
このように、マスターベーションは健康的で自然な行為であり、特に思春期においては、自分自身を理解し、性的な自己決定権を確立するための重要なプロセスと言えるでしょう。
実際に行われた研究によれば、女性がマスターベーションを通じて感じる満足感や自己肯定感は、全体的な性的機能にも良い影響を与えることがわかっています。一方で、マスターベーションに対して罪悪感やタブー感を持っている場合、その影響は性的な欲求や満足度に対してネガティブに働くことも示されています。このことからも、マスターベーションに対してポジティブな感覚を持つことは、パートナーとの関係性や性行為への姿勢についてポジティブに影響すると考えられるのです。(文献2)
しかしながら、社会的な影響や文化的な背景、親の教育によって、マスターベーションが「よくない・恥ずべき行為」とみなされることも少なくありません。特に女性の場合、性的な自己探求に対する社会的な圧力や偏見が根強く存在します。親が嫌悪感や否定を示すと、子どもは「よくない・恥ずべき行為」という気持ちを持ってしまいやすくなるでしょう。
その結果、若者が自分の性について自由に話す機会が少なくなり、性教育の不足や誤った情報が原因で、健康的な性的発達が妨げられる可能性があります。