「帝王切開は3回まで」は本当? 反復帝王切開と経腟分娩トライについて知っておきたいこと

帝王切開の反復回数と、その後の経腟分娩について詳しく解説します。
重見大介 2026.07.13
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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「一度帝王切開になると、次も必ず帝王切開になる」
「帝王切開で産めるのは3回までらしい」

こうした話を耳にしたことがある方は少なくないと思います。

実際、帝王切開を経験した方の次回妊娠では、分娩方法について慎重な判断が必要になります。再び予定帝王切開を選ぶのか、それとも条件が整えば経腟分娩を試みるのか。さらに、将来3人、4人と子どもを希望する場合、帝王切開を繰り返すことにどの程度のリスクがあるのか。

今回は、読者の方からのご質問も踏まえて、反復帝王切開と、帝王切開後に経腟分娩を試みるTOLACについて、エビデンスに基づいて解説します。

この記事でわかること

  • なぜ帝王切開を繰り返すと危険なのか

  • 実際の診療現場ではどう考えているか

  • 「帝王切開は3回まで」というルールはあるのか

  • TOLACとVBACとは何か

  • 帝王切開経験後の出産では絶対に帝王切開がいいのか

  • 帝王切開経験後の経腟分娩:最大のメリットは何か

  • 結局、帝王切開後の次の分娩方法をどう考えればいいのか

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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先月の質問募集で、以下のご質問を読者さんからいただきました。気になっている方も多いと思いましたので、これについてのアンサー記事です。ぜひ多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。(大学院、大変だと思いますが応援してます!)

大学院の助産師課程に通う学生です。 帝王切開について、一度帝王切開となると、帝王切開での分娩は3回までと聞いたことがあるのですが、最新のエビデンスと臨床現場での対応はどのようにされていますでしょうか。 また、帝王切開後の経膣分娩(TOLAC)について、臨床における最新の動向や先生のお考えについて知りたいです。

なぜ帝王切開を繰り返すと危険なのか

まずは、帝王切開を繰り返すことによって生じる危険性や懸念をおさらいしておきましょう。

帝王切開は腹部と子宮に切開を加える手術です。基本的にトラブルなく1時間以内に終わることの多い手術ですが、帝王切開を繰り返すことで、いくつかのリスクが蓄積しやすくなります。

代表的なリスクが「癒着」です。
手術後の治癒過程で、本来はそれぞれ離れているはずの子宮、腹壁、膀胱、腸管などが互いにくっつくことがあります。癒着が強くなると、普段から腹痛や便通異常が起こりやすくなってしまうことに加え、次回手術で子宮まで到達するのに時間がかかり、膀胱や腸管を損傷するリスクが高くなってしまいます。

次に、「子宮壁の菲薄化」です。
これは、切開して縫合した部分の子宮の壁(子宮瘢痕部などと呼ばれます)がどうしても100%回復せず、子宮の壁(=平滑筋という筋肉)が薄くなってしまうものです。多少薄いくらいであれば大きな問題にはなりにくいですが、中には「ほぼ膜一枚くらいの厚さしかなく、子宮内の胎児が透けて見える」状態になることもあり、かなり薄い状態だと妊娠中や分娩時に子宮が破けてしまう「子宮破裂」の危険性があります。

もう一つ、重要なのが「前置胎盤と癒着胎盤スペクトラム(placenta accreta spectrum:PAS)」です。
次の妊娠時に、前回帝王切開で切開した子宮瘢痕部の近くに胎盤が形成され、特に前置胎盤(子宮口を覆うように胎盤ができた状態)を伴う場合、胎盤が子宮壁に異常に深く食い込んでしまい分娩時に剝がれにくくなることがあります。中には剥がれる際に大量出血を起こし、輸血や緊急子宮摘出術が必要になることもあります。

この分野で古典的かつ現在も頻繁に引用されるのが、約3万人を対象としたSilverらの多施設前向き観察研究です(文献1)。
この研究では、帝王切開回数が増えるにつれて、癒着胎盤、膀胱・腸管・尿管損傷、輸血、集中治療室(ICU)入室、子宮摘出などが増加しました。癒着胎盤の発生割合は、1回目0.24%、2回目0.31%、3回目0.57%、4回目2.1%、5回目2.3%、6回以上6.7%でした。子宮摘出が必要となった割合も帝王切開の回数増加とともに上昇しています。

ただし、この数字の解釈には注意が必要な部分があります。本研究は1999〜2002年の米国施設のデータであり、対象集団や診療体制が現在の日本と同じではありません。また、リスクを大きく左右するのは胎盤の付着位置など個別の状態で、単純に一律化すべきではありません。

実際、より新しい2023年の研究(文献2)では、3,582例の帝王切開を解析した結果、回数とともに有害事象(合併症や重大なトラブルなど)は増える傾向があった一方、リスクの絶対値は全体として低く、前置胎盤がない女性では帝王切開の回数による母体有害事象の明確な差を認めなかったと報告されています。ただし、子宮瘢痕部の菲薄化・離開は回数とともに増えていました。

この研究の著者らは、

  • 前置胎盤を伴っていない女性では、帝王切開の回数が増えても周産期合併症リスクの上昇とは関連していない

  • 前置胎盤を伴う女性ではリスクが最も高くなるが、帝王切開を繰り返しても前置胎盤の発生率は増加しない

  • 帝王切開の回数が増えるほど子宮瘢痕部の菲薄化・離開の頻度が大幅に高まるため、こういった所見が認められた妊婦の場合には、分娩時期を慎重に決めるべき

とまとめています。

実際の診療現場ではどう考えているか

では次に、帝王切開を複数回経験した妊婦さんに対し、産婦人科医はどのように考え、対応するのかをお伝えします。

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