水中分娩は安全なの? 〜メリットやリスク、選び方を徹底解説〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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出産方法の選択肢が広がる中で、実はかなり以前から存在している「水中分娩」というものがあります。その名の通り、分娩室に備えてある湯船のようなところでぬるま湯に浸かって分娩する方法で、リラックスできる、お産の痛みが和らぐなどの声もある一方で、「本当に安全なの?」という不安もあるかと思います。
今回は、最新の研究結果をもとに、水中分娩のメリットやリスクについて、産婦人科医の視点からわかりやすく解説します。
この記事でわかること
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水中分娩の具体的な内容と実際の流れ
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水中分娩の安全性に関する最新のデータ
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水中分娩のメリット
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気をつけたいポイントと注意すべきリスク
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水中分娩を選ぶ前に考えておくべきこと
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
水中分娩ってなに? 具体的内容と実際の流れ
「水中で出産する」と聞くと、少し驚かれる方もいるかもしれません。でも実は、水中分娩は古代ギリシャやローマ時代にも行われていたという記録があり、思っている以上に歴史のある出産方法なんです。
現代では特にイギリスやオランダ、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国で広く取り入れられており、たとえばイギリスでは全体の約1割が水中分娩であるとも報告されています。一方、日本やアメリカではまだ一般的とは言えず、選べる施設はかなり限られています。
*実は、私が初期研修で勤務していた病院では水中分娩を扱っており、実際に水中分娩の立ち会いもしたことがありました。研修の身でもあったので上級医の指示のもとでしたが、水中分娩で赤ちゃんを取り上げる経験は貴重でした。。(内心、かなりドキドキでした)
水中分娩とは、陣痛の途中だけでなく、赤ちゃんが生まれる瞬間も水中で迎える出産方法です。一般的には、温かいお湯(36〜37℃程度)を満たした専用の出産用プールや浴槽を使い、その中で分娩の進行をサポートします。医療機関だけでなく、自宅や助産院でも行われることがあり、出産施設によって設備や方針には違いがあります。
なお、陣痛中にだけお湯に浸かり、出産そのものはお湯の外で行うケースもあります。
今回紹介する「水中分娩」は、主に「出産そのものが水中で行われる分娩方法」を指しますので、ご了承ください。
では、なぜ水中で出産するのでしょうか?
主な理由のひとつは、お湯に浸かることで心と体がリラックスしやすく、痛みの感じ方がやわらぐとされているためです。浮力によって体が軽くなり、自由な体勢が取りやすくなるのも魅力の一つと言われます。妊婦さん自身が「自分のペースで出産に向き合える」と感じやすく、出産体験への満足度が高まるケースも少なくありません。
ただし、どこでも、誰でも選べる方法ではないということも知っておく必要があります。例えば、妊娠中に合併症がある場合や、赤ちゃんに特別なケアが必要な場合、また分娩の進行が通常とは異なるときなどは、水中分娩は適していません。また、緊急の対応が必要になったときのために、医療スタッフの体制や設備が整っている施設で行うことが大前提です。
このように、水中分娩は「自然な出産」「心地よい出産」を希望する方にとって魅力的な選択肢である一方、やはり分娩時は何が起こるかわかりませんので、医療的な安全性と適切な判断が何よりも大切になります。
SNS等では、やや「オーガニック信仰」や「スピリチュアル系」に絡んだ投稿や発信が多く見受けられ、そういった「過剰な自然嗜好や心理的アピール」には注意が必要だなとも感じています。
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