性教育シリーズ(6) 〜ジェンダーバイアス〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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最近では性教育に注目が集まりつつあり、書籍やネット記事も増えてきています。でも、まだまだ「性教育って何したらいいかわからない」「自然に覚えていくものでは?」と思っている人もいるのではないでしょうか。
性教育シリーズの第6回目として、勝手な思い込みやステレオタイプによって相手を傷つけたり自分にとってもデメリットとなる「ジェンダーバイアス」について考えていきましょう。
この記事でわかること
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「包括的性教育」とはどういうものか
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「ジェンダーバイアス」とはどういうものか
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伝えるときのポイント(1) 固定観念や先入観について理解する
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伝えるときのポイント(2) 固定観念の影響を具体的に説明する
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伝えるときのポイント(3) 多様性を尊重することの重要性
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伝えるときのポイント(4) 自分自身を肯定する力を育てる
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具体的な伝え方の例
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ジェンダーバイアスの正しい理解が仕事でも役立つ理由
「包括的性教育」のおさらい
日本で多くの人がイメージする「性教育」は、「性に関する知識やスキル」として、妊娠・出産の仕組みや避妊、性感染症予防を教える(学ぶ)ことかもしれません。
しかし、「包括的性教育」はこれとは異なる概念です。国際的に広く認知・推進されている、「性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ」ための重要な概念なのです。英語ではcomprehensive sexuality education (CSE) などと表現されます。
詳細は以前の記事にまとめたので、まだ読んでないという方はぜひ先にご覧ください。
「ジェンダーバイアス」とは?
ジェンダーバイアスの概要
ジェンダーバイアスとは、性別に基づいて特定の役割や特性を割り当てることによる偏見や先入観を指します。これは、男性と女性、あるいはLGBTQに該当する人々に対する社会的な期待や固定観念(ステレオタイプ)によって形成されます。
そして、ジェンダーバイアスは、個人の能力や選択肢に負の影響を与えることがあり、平等な機会を阻害する要因となります。
例えば、男性はリーダーシップに向いている、女性は家庭を守るべきだといったステレオタイプがジェンダーバイアスの一例です。これらの偏見は教育、職場、家庭、メディアなどあらゆる場面で見られます。教育現場では、男子生徒が理系科目に優れていると期待される一方、女子生徒は文系科目を選ぶよう勧められることがあります。職場では、男性が昇進しやすい一方、女性は育児や家庭の役割に専念すべきだと見なされることがあります。
(最近ではこうした偏見が減りつつあるとは思いますが、業界や職種、企業によっては今も根強く残っていることがありますし、家庭内でも問題になることは少なくないでしょう)
性教育におけるジェンダーバイアス
ジェンダーバイアスは性教育の分野でも重要なトピックです。昔の性教育では、男性と女性の役割が固定的なものとして教えられることが多く、性別の多様性や「個の権利」の視点が軽視されていたと言えるでしょう。その結果、自身のアイデンティティについて正しい認識や知識を得られないことがありました。
ジェンダーバイアスを解消するためには、まずその存在を認識し、教育やメディアで「性別への意識や役割の押し付け」をなくしていくことが重要です。性教育においては、全ての性別や性自認を尊重し、多様な価値観や観点を学ぶことで、全ての人が自分自身を正しく理解できるようなサポートが大切となります。
ジェンダーバイアスの解消は、個人の可能性を広げ、より公平で包摂的な社会を実現するための一歩と言えるでしょう。