「一人で出産し新生児を遺棄→母親が逮捕」という事件、どうすれば無くせるのか

今回は、たびたび目にする悲しい事件を、どうしたら社会として無くせるのか考えます。
重見大介 2025.04.21
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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今回は、「未成年の少女が自宅で一人で出産し、新生児を死亡させてしまった」というような痛ましい事件に関して、「なぜこうした事態に至ってしまったのか」という背景となる環境・社会的要因を、産婦人科医の視点から考えてみます。

ここで挙げる要因はいずれも互いに密接に関連しており、一つだけではなく複合的に作用して悲劇を生むことが多いと考えられます。実際の事例や社会的背景を踏まえながら、具体的に「防げたはずのタイミング」を考え、社会としてできることを模索したいと思います。

この記事でわかること

  • 最近にもあった悲しい事件

  • 事件の背景にある環境・社会的要因とは

  • 防ぐことができ得たタイミング

  • 社会にとって必要な施策や支援とは

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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最近にもあった悲しい事件

「一人で出産し新生児を遺棄→母親が逮捕」

こんな事件やニュースを目にしたり聞いたりしたこと、皆さんもあるはずと思います。

最近でも、たとえば以下のようなニュースがありました。

生まれたばかりの男児の遺体を遺棄したとして、長野県警上田署は6日、同県上田市の無職少女(16)を死体遺棄の疑いで逮捕した。容疑を認めているという。
記事より引用

また、今年(2025年)1月のNHKの記事では、以下のようなことがまとめられています。

生まれてまもなく親から殺害・遺棄などされた赤ちゃんは、こども家庭庁によると、2023年に9人、およそ20年で185人にのぼります。
記事より引用
女性たちが置かれた厳しい環境や「境界知能」と呼ばれる特性、そして男性の“当事者意識の低さ”など、さまざまな背景が見えてきました。
記事より引用

こうした事件では、「新生児を死なせてしまった」という事実があり、それは罪に問われるべきことなのだとは思いますが、さまざまな疑問が浮かんできます。

  • 多くの場合は「女性が一人で出産した」という状況であり、妊娠という「女性一人では成し得ない生理現象」にもかかわらずなぜ一人孤独に決断しなければならなかったのか(男性の存在は?)

  • 避妊できなかったとしても、緊急避妊薬という手段はあるのに、どうして使わなかったのか

  • 妊娠が発覚したとしても、妊娠中絶という手段や、育てられないのであれば養子に出すという手段もあったはずなのに、なぜ放置・遺棄させてしまったのか

こうしたことを考えると、その女性だけの自己責任論に帰着させるべきではないと思いますし、「本来であれば事件となる手前で回避できたはず」のタイミングが複数あったのではないかとも思えます。

今回は、こうしたことを深掘りし、産婦人科医の目線から「悲しい事件」を無くすにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

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続きは、11080文字あります。
  • 事件の背景にある環境・社会的要因とは?
  • 防ぐことができ得たタイミングはどこにある?
  • 社会にとって必要な施策や支援とは?
  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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