出産時の「会陰切開」のすべて 〜エビデンス、実際の方法、次回妊娠への影響など〜
こんにちは。本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
詳細は以下をご覧ください。
この記事でわかること
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会陰切開とはどんな処置か
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会陰裂傷とはどんなものか
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国際的な会陰切開の近況
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会陰切開が実施されやすい要因
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会陰切開のエビデンス
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メリットがあるのかどうか
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会陰切開をするべき状況
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会陰切開をした場合、次回以降の妊娠に影響はあるのか
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会陰切開をしたら保険診療や民間保険の対象となるのか
会陰切開とは
会陰切開は、出産時に行われることがある医療的処置です。
女性の会陰部(腟の入り口と肛門の間)にハサミで切り込みを入れて、赤ちゃんの通り道を広げることで、分娩を容易にし、赤ちゃんや母体にかかる負担を軽減する目的があります。会陰切開は、通常、赤ちゃんの頭が出てくる直前に行われ、出産直後に縫合します。
基本的に切開直前に局所麻酔をしますが、一刻を争うような緊急時には麻酔をしない場合もあります。
縫合では自然に溶ける糸が使われる場合(退院時に抜糸しないこともあり)と、溶けない糸を使う場合(退院時に抜糸する)があります。
主な会陰切開の種類は以下の通りです。切開の長さは、概ね1.5〜2cm程度です。
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正中切開(Midline episiotomy)
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正中側切開(Midio-Lateral episiotomy)
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側切開(Lateral episiotomy)
Wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E9%99%B0%E5%88%87%E9%96%8B
会陰裂傷とは
一方で、会陰裂傷とは「切開をせず、自然にできた会陰の裂傷(キズ)」を指します。
会陰裂傷の重症度には4段階あります。
3度と4度を特に「重度な会陰裂傷」と呼ぶことが多いです。
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第1度会陰裂傷:会陰の皮膚や腟の粘膜にとどまるもの(筋層には達しない)
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第2度会陰裂傷:会陰筋層まで及ぶが、肛門周囲の筋肉には達しないもの
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第3度会陰裂傷:肛門周囲の筋肉や腟直腸中隔に達するもの
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第4度会陰裂傷:第3度裂傷に加えて肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴うもの
国際的な会陰切開の近況
世界の流れを見ると、会陰切開の実施率は時代とともに低下してきています。