男性の年齢が妊娠に与える影響とは? 〜胎児の先天異常と出生後の発達や健康について〜
今回は、男性の年齢が「胎児の先天異常」と「出生後の発達や健康状態」に与える影響について詳しく解説します。
加齢による男性の生殖能力の変化や、男性の年齢が妊娠率と妊娠中の合併症(流産、胎児発育不全、早産など)に与える影響については、こちら(前回)の記事をご覧ください。
この記事でわかること
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胎児の先天異常について男性の年齢が与える影響
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生まれた子どもの認知能力について男性の年齢が与える影響
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生まれた子どもの自閉スペクトラム症(ASD)について男性の年齢が与える影響
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生まれた子どもの注意欠陥・多動性障害(ADHD)について男性の年齢が与える影響
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生まれた子どものがん(悪性腫瘍)について男性の年齢が与える影響
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マイオピニオン(私個人の考えや意見)
男性の年齢が与える影響:胎児の先天異常
女性の年齢が上がることで、赤ちゃんの先天異常(生まれつきの異常)が増えることはよく知られており、例えばダウン症候群(21トリソミー)の発生率は、20代女性に比べて40代女性では10倍ほどに高くなります。
では、男性側の年齢の影響はあるのでしょうか?
これまでの研究では、一部の先天異常(例:神経管欠損、心臓の疾患、四肢欠損)や腫瘍性疾患(例:ウィルムス腫瘍)が高齢の男性でわずかに増加することが報告されています。(文献1-3)
500万件以上の出生データを分析した2007年の研究を一つ紹介します。全体で1.5%の出生児に先天異常が観察され、これを男性パートナーの年齢別に分類すると、25〜29歳の男性と比較した場合の30〜35歳、40〜44歳、45〜49歳、50歳以上の男性の出生児ではいずれも高い頻度となり、年齢が高いほどその影響は大きいものとなっていました。ただし、影響の大きさ自体は、女性の年齢の影響に比べると非常に小さなものでした。(文献4)
以上から、高年齢の男性の子どもではわずかに先天異常のリスクが増加すると考えられますが、その影響の程度は大きいものではなく、女性の年齢による影響の数十分の一から数百分の一くらいだと言えるでしょう。(とはいえ、男性の年齢も無関係ではないことは知っておくべきです)