出生数が急激に減少する日本の未来 〜産婦人科医が思う懸念と不安〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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日本の年間出生数が70万人を下回る可能性が報じられ、少子化の進行が深刻化しています。この現状は、周産期医療体制にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
産婦人科医として、人口動態の変化と医療現場の課題を踏まえ、今後の対応策についても思いを巡らせてみます。
この記事でわかること
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日本の出生数減少の現状と将来予測
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少子化が進む未来に起こるであろう弊害
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周産期医療体制への影響と課題
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高齢妊産婦の増加とリスク管理の重要性
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地域間格差と医療資源の最適配置
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未来の周産期医療に向けた取り組みと展望
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
日本の出生数減少の現状と将来予測
近年、日本の出生数は急速に減少しています。2023年の出生数は72万7,277人で、前年より約4万3,000人減少し、過去最低を更新しました。(文献1)
この傾向は今後も続くと予測されており、2024年11月5日には、まもなく70万人を下回る可能性が大きいことが報じられました。(文献2)
この出生数の減少は、少子高齢化の進行を加速させ、社会全体に大きな影響を及ぼします。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、総人口は50年後に現在の7割に減少し、65歳以上の高齢者が全体の約4割を占めるとされています。(文献3)
ただ、少子化の進行が想定以上に早まってきているため、50年後と言わずもっと近い未来の話かもしれません。日本という国がそう遠くない未来に大きく変わっていくことは確かです。
出生数の減少要因として、結婚や出産に対する価値観の変化、経済的不安定、仕事と家庭の両立の難しさなどが挙げられています。特に、若年層の結婚や出産に対する意欲の低下が顕著であり、2023年の婚姻件数は約47万5,000組と、90年ぶりの低水準となっています。
政府は、子育て支援の充実や働き方改革など、出生率向上に向けた施策を進めていますが、依然として効果は乏しいと言わざるを得ないでしょう。専門家からは、経済的支援だけでなく、男女の役割分担や働き方に関する社会的意識の改革が必要との指摘もあります。
このような状況下で、周産期医療体制も変化を余儀なくされています。出生数の減少に伴い、産科医療の需要が地域によって偏在し、潰れてしまう産院が後を立ちません。分娩費用の保険適用化による影響も懸念されています。
これに伴い、医療資源の最適な配置の必要性がどんどん増している状況です。
また、出産時年齢が徐々に上がってきていること、不妊治療が普及してきていることを受け、高齢(高年)出産の増加とそれに伴うリスク管理や、医療従事者の確保・育成など、多角的な対応が必要とされています。
出生数の減少は社会全体の大きな影響を及ぼすものであり、医療現場だけでなく、経済、教育、労働など多方面での連携と取り組みが求められます。私たち一人ひとりがまずこの現状を理解することが大事だと思っていますし、周産期医療には甚大な変化が生じていくことを認識していただきたいと思っています。
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- 少子化が進む未来に起こるであろう弊害
- 周産期医療体制への影響と課題とは?
- 高齢妊産婦の増加とリスク管理の重要性
- 地域間格差と医療資源の最適配置
- 未来の周産期医療に向けた取り組みと展望
- マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
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