ヒトの皮膚細胞から卵子を作る? 最新の研究結果の意味と期待とは
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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妊娠のためには受精卵が必要で、そのためには卵子と精子が必要です。これは、昔も今も変わっていません。しかし、機能的に問題ない卵子が十分に得られない女性もいますし、男性にも精子が問題で不妊となる人もいます。こうした場合、不妊治療はかなり難しいことになってしまい、現在では第三者から卵子/精子の提供を受ける「卵子提供」「精子提供」に頼らざるを得ない可能性が高くなってしまいます。
そのような中で、「皮膚の細胞を使って卵子を作れないか?」というテーマでの研究報告が、最近公開され話題を呼びました。今回は、この研究結果についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
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どんな報道がされたのか
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研究論文はどのようなものか
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ある程度の専門知識を持つ人向けの解説
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非医療者の方にもわかりやすい解説
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結果をどのように解釈すればいい・するべきなのか
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
どんな報道がされたの?
まず、実際にどんな報道がされたのかを確認してみましょう。
CNNでは、以下の記事が出されています。
*こちらはYahoo!ニュースにも転載されていました
どちらも無料記事なので、報道内容の概要を以下にまとめます。
今回の研究では、ヒトの皮膚細胞から核(細胞の遺伝情報の大部分を占める部分)を採取し、核を取り除いたドナーの卵子に移植した。研究者は、卵母細胞を82個作り出し、実験室で受精させた。
研究チームは、自然な細胞分裂を模倣することで余分な染色体を除去し、23本のうち1セットを廃棄して、機能する卵細胞を残す方法を考案した。
結果として得られた胚はすべて染色体の総数が違っているなど染色体異常を示していた。これらの胚から健康な赤ちゃんが生まれることは期待できず、おそらくすべてが早期に発達が止まってしまうと考えられた。
今回の研究者は「不妊治療の新たな手法開発での画期的な出来事だ」と述べた。だが、この技術が臨床的に利用できるようになるまでには少なくとも10年はかかるという。
この分野の専門家からは、慎重ながらもポジティブな見解が示されており、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアマンダ・クラーク教授は「今回の研究は目覚ましい進歩であるものの、現状の技術では不妊治療には役立たない」と述べた。とはいえ、今回の論文で報告された取り組みは「重要な第一歩」だとの見方を示した。
ざっくりいえば、
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皮膚の細胞の核を、卵子(核を取り除いたもの)に移植して「妊娠できる機能を持つ卵子を人為的に作れるか」を試す実験の一部を実施した
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ただ、皮膚の核には46本の染色体があるので、本来の卵子が持つ染色体23本になるよう減らす必要があり、今回はそれを中心に検証した
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結果は、全て染色体異常が生じてしまい、このままでは正常に赤ちゃんが育たないだろうと考えられたが、大きな一歩になる知見だと評価された
となるでしょう。
なんとなくわかったような、わからなような、という感じかもしれません。なので、もう少し具体的に論文の中身を読み解いていきましょう。
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