男性医師は産婦人科に関わる発信や診療をするべきではないのか?

SNSで最近も話題になっていたので私なりの考えをつぶやきます。
重見大介 2025.11.18
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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この記事で話すこと

  • 「男性」と「女性」、そして「個々人」の違い

  • 「男性産婦人科医」にモヤモヤする人がいる背景

  • 私が医師としていちばん大事にしている「軸」

  • 男性産婦人科医として気をつけるべきこと

  • 女性医師や助産師など、チームで支えることの重要性

  • 私の苦手な医師アカウントのタイプ

  • 情報発信をするときに男性医師として意識していること

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はじめに

産婦人科医として診療や情報発信をしていると、ときどきこんな声をいただきます。

「やっぱり産婦人科医には女性だけがなるべきだ」
「男性が産婦人科を選ぶなんておかしいのでは」
「性や出産のことは、当事者である女性が語るべきでは?」

正直に言うと、こうした言葉にドキッとすることは私もありましたし、今でもそう感じるときはあります。自分の存在そのものが、誰かにとっては不安やモヤモヤの原因になっているのだと感じるからです。

ただ同時に、そうした考えや思いが「おかしい」とは思いません。
妊娠・出産・生理・性の悩みは、とてもプライベートかつデリケートな話題です。そこに「男性」が関わることに抵抗を覚えるのは、人によって無理もないことだろうとも感じています。

ただ、つい最近、とあるポストが話題になっていました。
引用はしませんが、以下のように受け取れるもので、これには性別や医療職かどうかに関わらず多くの人から反論が寄せられていました。

妊娠・出産の経験が不可能な男性医師が妊産婦へ「啓発」するのはいかがなものか

これは私もおかしいなと思いましたし、この主張だと「妊娠出産を経験したことのない・経験できない女性」も該当することになり、非常に偏った視点・差別的な思考が土台にあるのかなと感じました。がんの手術をする医師のうちがんの経験がある医師は非常に少数でしょうし、乳腺外科が女性にしかできないわけもありませんしね。

今回は、「男性医師は産婦人科に関わる発信や診療をするべきではないのか?」という問いについて、男性産婦人科医としての私の考えを言葉にしてみたいと思います。

誰かを批判したり、「こうあるべきだ」と押しつけることが目的ではありません。 不安や違和感を抱く方の気持ちをできるかぎり汲み取りながら、私なりの考えをお伝えできたらと。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

「男性」と「女性」、そして「個々人」の違い

はじめに、「男性」と「女性」の違いについて整理してみましょう。

一言で「男女」といっても、いくつかの観点で考えられるはずです。(なお、ここでは特殊な染色体異常による影響や性自認は考慮せず、生物学的な女性と男性の違いについて書きます)

  • 絶対的な違い:それぞれ特有の生殖器を有しており、月経や妊娠、出産は女性にしかない現象である

  • 社会的影響の違い:それぞれの性別に多い職業があったり、求められる役割が異なったりする(国や地域、文化によっても大きく異なる)

  • 性別としての思考の傾向:男性は「月経や妊娠という経験」を持ち得ないため当事者の気持ちや苦労を想像しにくかったり、逆に女性は「周囲や社会から男らしさを求められる男性の苦悩」が想像しにくかったりする

このような違いは実際あるでしょう。

しかし、個々人による差も非常に大きいことを忘れてはなりません。
例えば、「月経痛をほとんど感じない女性」もいますし「妊娠中につわり症状が皆無だった女性」もいます。また、「女性軽視の意識が強い男性」もいれば「女性に大きな敬意を持っている男性」もいます。同じ性別でも、人によって経験や考えはいろいろです。

現実世界では、こうした「性別による違いや傾向」と「個々人の違い」が入り混じって、さまざまな事象が起きていることは無視できません。

よって、多くの事象については「男性だから」「女性だから」と大雑把に区別して断定的に何かを言うのは乱暴になりがちで、あくまでも傾向について言及したり、一部の人に対して議論する方が建設的だと言えるでしょう。

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