HPVワクチンは「1回接種」でも効果があるの?これまでの研究結果を解説

子宮頸がんなどを予防するためのHPVワクチン。日本では2回または3回接種が必要ですが、世界的には1回接種の有効性に関する研究が進められています。
重見大介 2024.06.09
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子宮頸がんなどを予防するためのHPVワクチン。小学校6年生から高校1年生までが最も効果の高い接種年代で、日本でも積極的勧奨のもと接種費用は国が負担してくれています(原則、女子のみ)。

日本では半年間かけて2回または3回の接種が必要ですが、実は世界的には1回接種の有効性に関する研究が進められています。今回は、これまでに報告されている「1回接種」に関する研究結果をわかりやすく解説します。

*本記事は、1回接種を読者の皆さんに勧めるものではありませんのでご理解ください。

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この記事でわかること

  • HPVワクチンの基本情報

  • 日本で実施されている接種スケジュールの内容

  • これまでの研究結果:2013-2016年頃

  • これまでの研究結果:2018-2020年頃

  • これまでの研究結果:2021-2023年頃

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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HPVワクチンの基本情報をおさらい

まず、HPVワクチンの基本情報を簡単におさらいしておきましょう。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性的接触のある女性であれば50〜80%以上が生涯で一度は感染するとされているごくごく一般的なウイルスです。
子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマ等、多くの病気の発生に関わっています。特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。
HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)は、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。

現在、日本国内で使用できるワクチンは、防ぐことができるHPVの種類によって、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類あります。
サーバリックスおよびガーダシルは、子宮頸がんをおこしやすい種類であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。そのことにより、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。
シルガード9は、HPV16型と18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぐため、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます。

日本で実施されている接種スケジュールの内容

次に、日本で行われている接種スケジュールについて確認しておきましょう。

HPVワクチンは、一定の間隔をあけて同じワクチンを合計2回または3回接種します。接種するワクチンや年齢によって、接種のタイミングや回数が異なります(下図参照)。
どの種類のワクチンでも、1年以内に規定回数の接種を終えることが望ましいとされています。

2回接種で良いとされているのは、「15歳になるまでに9価HPVワクチンの1回目を接種する」場合だけですね。

よって、日本では「1回接種」はまだ認められていないことになります。これは大事なことなので覚えておいてください。(本記事はあくまでもこれまでの研究結果の解説であり、1回接種を読者の皆さんに勧めるものではありません)

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