妊娠中のつわり・悪阻を徹底解説! 〜日本と海外の違いにも着目して〜

妊娠中のつわり・悪阻は、多くの妊婦さんの悩みの種です。産婦人科医としても対処に困ることが少なくなく、心苦しく思っています。今回は妊娠中のつわり・悪阻について、基本事項から最新知見まで、日本と海外の違いにも着目して徹底解説します。
重見大介 2023.07.29
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こんにちは。本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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この記事でわかること

  • つわり・悪阻とはどんなものか

  • つわり・悪阻は胎児に悪影響があるのか

  • 日本の診療ガイドラインにはどのような対処法が書かれているか

  • 米国産婦人科学会の患者向け説明資料における記載

  • セルフケアとしてできること

  • つわり・悪阻について、特に注意するべき人とは

  • つわり中に歯を守ることが大事な理由

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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つわり・悪阻の基本説明

「つわり」とは、妊娠によるホルモンバランスの変化によって生じる、悪心(吐き気)、嘔吐、食べ物の好みの変化などの総称になります。ただ、人によってさまざまな他の症状(頭痛や眠気、唾液の増加など)もみられたり、重症度についても個人差が大きいことが特徴です。

また、つわりは50〜80%の妊婦さんが経験すると言われており、とても多くの女性が抱える問題と言えます。初めて出産する女性に比較的起こりやすい一方で、出産経験がある女性では重症化しやすい、というデータもあります。

英語では「Morning Sickness」と呼ばれますが、日中でも夜でもいつでも起こる可能性があります。つわりは通常、胎児に害を与えることはありませんが、仕事や普段の日常生活に大きな影響を与えることもあります。

妊娠中の吐き気や嘔吐は、妊娠9週までに始まることが一般的で、ほとんどの女性では妊娠14週までに落ち着きます。ただ、中には数ヶ月続く場合や、妊娠中ずっと続いてしまう場合もあります。(1)

日本の診療ガイドラインにおける記載

日本の産科診療では、日本産科婦人科学会が刊行している診療ガイドライン(2)が活用されています。「妊娠悪阻の治療は?」という項目では、以下のような内容が記載されています(一部要約・改変しています)。

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1. 休養を取ることが症状の緩和につながることなどを説明し,少量・頻回の食事摂取と水分補給を促す.

2.脱水があれば十分な輸液(点滴による水分補給)をする. その際にビタミンB1(Thiamine)を添加する.

3.吐き気の緩和にビタミンB6(Pyridoxine)の投与を検討する.

4. 吐き気・嘔吐が激しく制吐薬(吐き気止め)について尋ねられたら,明らかな胎児への悪影響はこれまでに報告されておらず使用できることを説明し,使用を検討する.

5.十分な飲水や補液をして深部静脈血栓の発症予防に努める.

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また、以下のようなことについても診療ガイドラインで言及されています。(2)

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