ユースクリニックについて徹底考察! 〜国内外の現状、意義、普及への課題など〜

今回は、思春期世代の健康を守る「ユースクリニック」について、徹底的に考察してみました。
重見大介 2025.03.19
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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思春期の若者にとって、性や身体、メンタルの悩みはとても重要であるにもかかわらず、気軽に相談できる場はまだまだ限られています。そんな中、北欧や北米で注目されているのが「ユースクリニック」。10代から20代前半を対象に、妊娠・避妊、性感染症の予防、メンタルヘルスなどをワンストップで支援する場です。

日本でも同様の取り組みは可能なのでしょうか。海外の事例や実績を踏まえながら、その意義と課題、日本で普及させるために必要なことなどを徹底的に考察してみました。ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること

  • 「ユースクリニック」とはどのようなものか

  • 海外の先進事例:北欧・北米などでの成功要因

  • 有効性とメリット:若者の健康と社会への影響

  • ユースクリニックにかかる費用と財源の考え方

  • 日本における導入の課題:制度と社会的な壁

  • 日本でユースクリニックを実現・拡大するために必要なこと

  • マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)

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ユースクリニックとはどんなもの?

まず、ユースクリニックとはどういうものかを説明していきましょう。聞いたことある方もいらっしゃるでしょうが、日本ではまだ一般的ではないので、初めて聞いたという方もいると思います。

ユースクリニックは、思春期から青年期にあたる若者が抱える様々な悩みや症状に対応する医療・相談の場です。対象となる年齢層はおおむね10代から20代前半とされ、特に性に関する問題(例えば妊娠や性感染症、避妊など)をメインに扱いますが、メンタルヘルスや対人関係の悩みにまで幅広く対応することが多く、「思春期〜青年期の健康」に特化した施設であることが大きな特徴となっています。若者が安心して相談できる「ユースフレンドリー」な環境を作っているんですね。

米国コロラド州にある「The Youth Clinic」。ウェブサイトより引用。

米国コロラド州にある「The Youth Clinic」。ウェブサイトより引用。

米国コロラド州にある「The Youth Clinic」。ウェブサイトより引用。

米国コロラド州にある「The Youth Clinic」。ウェブサイトより引用。

思春期は身体的にも精神的にも大きな変化が訪れ、自我の形成や社会的な人間関係が大きく変わっていく時期です。しかし、こうした成長過程においては、どうしても大人には打ち明けにくい悩みや、周囲の理解を得ることが難しい問題に直面することが少なくありませんよね。

例えば、月経不順や月経痛、性行為に関わる悩み、友人関係や進路に関する不安、またはメンタル面での不調など、悩みごとや困りごとは多岐にわたります。それにもかかわらず、多くの若い人たちは、相談先を知らなかったり、医療機関を受診するハードルを高く感じたりして、一人で抱え込んでしまっているケースが少なくありません。(私も昔を思い起こせばそんなことがありましたし、きっと皆さんもそうした出来事や思い出が少なからずあったのではないでしょうか。。!)

こうした状況を解消し、若者が気軽に医療やカウンセリングを受けられるようにするのがユースクリニックの目的と存在意義です。具体的には、産婦人科医や助産師、看護師、カウンセラーなど、思春期領域に理解の深い専門家がチームを組み、連携しながらワンストップで対応します。

また、プライバシー保護を徹底し、匿名や保険証を使わずに受診できる仕組みを整えている国やクリニックもあります。これにより、保護者や学校に知られたくないという理由で相談を避けてきた若者でも安心して利用しやすくなるのです。思春期世代に対しては、いかに「相談しやすくするか」が最重要課題とも言えますからね。

でも、日本だとあまり聞いたことがないし、どこにあるの?と思われるかもしれません。

ユースクリニックは北欧諸国を中心に普及しており、他の欧州や米国、カナダ、一部アジア圏でも少しずつ導入が進んでいます。若い世代が恥や不安を感じることなく、性やメンタルの健康について早期にサポートを受けられる環境を整えることは、その子どもたちの将来や社会全体にとっても大きな意義があるとされています。

日本でも近年、若者の性やメンタルの問題への関心が高まりを見せており、ユースクリニックの存在が一つの解決策として期待を集めています。(が、なかなか実現には難しいことも多く、それは後半で解説します。)

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