最近の仕事内容を紹介します 〜ベンチャー企業編〜
私は現在、以下のような仕事を並行してやっています。
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ベンチャー企業(株式会社Kids Public)の社員
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研究(データ分析、論文執筆、論文投稿など)と関連する教育
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講演(女性の健康、研究や論文、フェムテックなどについて)
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執筆(本ニュースレター、Yahoo!ニュース、雑誌等からの依頼原稿、書籍執筆など)
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コンサル(企業の新規事業開発、個人のメンターなど)
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診療(時期によって変動あり、直近はほぼゼロにしています)
今回は上記のうち「ベンチャー企業」での仕事内容にフォーカスします。
医師としてベンチャー企業でどのようなスキルを活かせるのか、どのような価値を創出できるのか、大変なことは何か、などをざっくばらんに紹介します。
読み物として気楽に楽しんでいただいたり、医療従事者として参考にしていただいたりと、お役に立てば嬉しいです。
*本記事は、前半は無料で読めますが、後半はサポートメンバー限定です。
この記事でわかること
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ベンチャー企業とはどんなものか
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スタートアップ企業とはどんなものか
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オンライン相談とはどんなものか(オンライン診療との違い)
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オンライン相談サービスの運営で大切にしていること
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私自身の具体的な業務内容
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オンライン相談事業を通じて達成したい将来の目標
そもそもベンチャー企業ってどんなもの?スタートアップとの違いは?
ベンチャー企業とは、新しいアイデアや技術をもとに、急成長を目指す小さな企業を一般的に意味します。通常、革新的な製品やサービスを開発・提供しますが、市場のニーズやトレンドを踏まえてときに柔軟に事業やサービスの軌道修正や改善をします。また、これまでになかったプロダクトを提供するため、さまざまなリスクを取りながら、新しい市場を開拓していくことも多いです。
ちなみに、ベンチャーとは「アドベンチャー(adventure)」から作られた和製英語とされています。
多くの場合、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから資金を調達することで、売り上げが立っていない状況でも製品・サービス開発と市場獲得を短期間に達成することを目指します。そして、最終的には上場や売却を目指す企業が多いです。
市場で生き残り、大きく成長するためには、革新的な技術やアイデア、柔軟性、大手企業がなかなか手が出せないニッチな分野に挑戦すること、などが必要になります。
ChatGPTに代表的な「成功した世界的ベンチャー企業」を3つ挙げてもらうと、以下になりました(全てアメリカの企業になっちゃいました)。日本ではまだ馴染みがなくても、一度は社名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
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Uber(ウーバー)
正式にはウーバー・テクノロジーズ(英: Uber Technologies, Inc.)。Uberは、2010年に設立されたアメリカのベンチャー企業で、乗車シェアリングサービスを提供しています。ユーザーはスマートフォンアプリを使用して、車両の予約、乗車、支払いを行います。Uberは急速な成長を遂げ、世界中の多くの都市で利用されています。2019年に上場。 -
Airbnb(エアビーアンドビー)
Airbnbは、2008年に設立されたアメリカのベンチャー企業で、宿泊施設のオンラインマーケットプレイスを提供しています。個人や事業者が自宅や空き部屋を貸し出し、旅行者がそれらの宿泊施設を予約することができます。Airbnbは世界中で利用され、宿泊の新しい形態を提供しています。2020年に上場。 -
Tesla(テスラ)
Teslaは、2003年に設立されたアメリカのベンチャー企業で、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー製品を開発・製造しています。自動運転技術の先駆者でもあります。Teslaは自動車産業に革新をもたらしています。2010年に上場。
なお、スタートアップ企業という言葉も聞いたことがあるかもしれません。スタートアップはアメリカで使われ始めた言葉で、その後日本でも広く知られるようになりました。
ベンチャー企業とスタートアップ企業の違いはいくつかありますが、
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ベンチャー企業:
「持続的イノベーション」をもたらす企業で、既存のビジネスモデルをベースとして独自の変化や工夫を加えて新たなサービスを生み出し拡大させていくイメージ。 -
スタートアップ企業:
「破壊的イノベーション」をもたらす企業で、既存の常識を壊して新たな価値観を生み出し、過去に事例のないビジネスを展開していくイメージ。
のような比較がされることがあります。(ただ混同されて使われることもありますし、明確な定義が確立・定着しているわけでもなさそうです)
私の所属しているベンチャー企業はどんなところか
私は株式会社Kids Publicというベンチャー企業に2018年に参画しました。小児科と産婦人科の領域で、遠隔健康医療相談(オンライン診療ではなくオンライン相談を提供)サービスを全国に展開する会社です。
現在では全国130以上の自治体(市区町村)や、70を超える企業や医療機関にサービスを導入していただいています。
参画したのは公衆衛生大学院の卒業直前のことで、ざっくり言うと以下のような経緯がありました。
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公衆衛生大学院の学びを通じて、「産婦人科領域の多くの社会課題」に目を向けられるようになり、その解決手段を模索していた
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さまざまな社会課題の多くに共通していたこととして「もっと早くに疾患や異常を発見できていればそもそもの発症や悪化を防げるものが多い」、「しかし情報がまだまだ社会に浸透しておらず、その原因として複数の要素が絡んでいる」、「産婦人科医が医療機関から一歩出て、社会に向けて活動していくことが求められる」などだと考えた
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それらを実現する手段の一つとして「スマホを基軸とした情報通信機器を用いたオンラインでのやり取り」があるのではないか、そして当時は社会にそういった仕組みやサービスが産婦人科の領域でほとんどなかった
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だったら自分でその仕組みやサービスを作ろう
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と思ったら知人の産婦人科医から「小児科で1-2年前に同様の想いで企業した人がいるよ」と教えてもらい繋げてもらった(その人が株式会社Kids Publicの創立者)
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すぐに直接会い、話したら、意気投合して翌月には参画することとした(自分で一から作ると時間も資金もかかるので、社会実装を最速にするためには参画するのが最も良いだろうと考えました)
そんなわけで2018年1月に株式会社Kids Publicへジョインし、そこから産婦人科のオンライン相談サービスの開発・構築・試験的リリース、そして正式なサービスリリースを2018年中に行いました。そうして生まれ、現在は毎月数千件の相談に対応しているサービスが「産婦人科オンライン」です。
2024年4月現在、社員数は30名を超え、オンライン相談に対応していただいている医療者(小児科医、産婦人科医、助産師)は230名を超えています。私が参画した当時は社員が5名以下だったので、ずいぶん大きくなったなぁと少し感慨深いです。
オンライン相談サービスってどんなもの?オンライン診療とは違う?
少し、オンライン相談(正確には「遠隔健康医療相談」)というもの自体について説明します。
現在の厚生労働省が示している指針では、「遠隔医療」という大きな枠組みの中に、「オンライン診療」や「遠隔健康医療相談」などのカテゴリーが含まれています。(文献1)
文献1より引用
この中で、「遠隔健康医療相談」は「診療行為ではないもの」とされており、以下のような特徴があります。
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医師以外も実施できる
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「診断」や「処方」などの診療行為はできない
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受診すべきかどうかや、疾患の一般的な説明、セルフケアのアドバイスなどは可能
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通常、自費での利用になる
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ビデオ通話だけでなく音声通話やテキストメッセージでのやり取りも可能
つまり、オンライン診療とオンライン相談は別扱いとなっており、それぞれ状況に沿って活用されるべきものとなっています。オンライン相談では診断や処方ができませんが、代わりにテキストでのチャットができたり、受診の前に専門家へ相談してみたい、検査の結果を改めて説明してほしい、などの際にはより便利に活用できたりします。