AMH検査で閉経は予測できる? 〜エビデンスによる徹底解説〜

AMH(Anti-Müllerian Hormone)は卵巣で作られるホルモンで、「卵巣の予備能」の指標として主に不妊治療で用いられています。では、このAMHは「閉経時期の予測」に使えるのでしょうか。
重見大介 2024.02.27
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閉経は、女性にとって避けられない生理学的なプロセスであり、その時期の目安を知ることは健康管理に役立ちます。きっと「いつ頃閉経するか知りたい!」という方も少なくないのではないでしょうか。ただ、なかなか閉経時期の予測は難しいというのが現状です。

ここ十数年で、抗ミュラー管ホルモン(AMH)が閉経の予測や診断に有用なのではないかと注目され、これまでに多くの研究論文が報告されてきました。

本記事では、最新論文をもとに、AMHの役割や閉経との関連性、閉経時期や早発閉経の予測に活用できるかどうかについて解説します。閉経時期を知るメリットや注意点、AMH検査の有用性について考えてみましょう。

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この記事でわかること

  • 閉経を予測することのメリットや有用性

  • AMHとはどのようなホルモンか

  • AMHと閉経時期の関連を分析した研究論文(2023年、システマティックレビュー)

  • 閉経時期の予測にAMHは活用できるのか

  • 早発卵巣不全の予測にAMHは活用できるのか

  • これまでの研究における総合的な結論

  • マイオピニオン(私個人の考えや意見)

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閉経を予測することのメリットや有用性

卵巣の活動が加齢に伴って徐々に弱まり、月経がこない状態が1年間続いた時に、1年前を振り返って「閉経した」と判断します。個人差はありますが、日本の平均閉経年齢は約50.5歳とされており、閉経をはさんだ前後5年間の約10年間のことを「更年期」といいます。

なお、これは「自然閉経」の場合です。中には、子宮筋腫やがんの治療で、閉経前に左右の卵巣を摘出する場合もあり、その場合には「人工的な閉経」として通常より早めに閉経となります。

また、「早発卵巣不全」という疾患もあります。これは「40歳未満で卵巣機能が低下して無月経(月経が3ヶ月以上無い状態)となった状態」のことで、発生頻度は低いものの心身に大きな影響を与えます。

「早発卵巣不全」については以下の記事もご参照ください。

閉経時期を予測することは、女性の健康管理やライフプランニングにとても重要です。また、閉経時期の予測は医療上の意思決定にも影響を与えます。例えば、ホルモン療法を開始するかどうかや、骨密度検査など更年期女性にとって重要な検査を検討する際に役立ちます。

以上から、閉経時期の予測は女性の健康を維持するために重要な情報源となるんですね。なので、これがもし正確に予測できれば、多くのメリットが生まれるでしょう。

AMHとはどのようなホルモンか

AMH(Anti-Müllerian Hormone)は抗ミュラー管ホルモン(アンチミュラリアンホルモンとも呼ばれます)のことで、卵巣で作られるホルモンです。AMHの血中濃度は基本的に卵巣内に残存している「卵胞の数」(卵胞は生まれた時点から新たに産生されることはなく徐々に減っていきます)を反映し、その数が少ないほどAMHの血中濃度も低くなります。そのため、AMHは女性の卵巣の予備能力(卵巣の機能がどのくらい残存しているか)を評価する上で重要な役割を果たしています。なお、AMH検査の結果は「卵胞の数」を推測するもので「卵子の質」とは関係ないことや、AMHが低いから妊娠率が低いというわけではないことに注意が必要です。

AMHは血液検査で、月経周期で大きく変動することはありません。
また、AMHの値については以下の点を理解しておくことも重要です。

  • 個人差がとても大きい(他人の値とそのまま比べることは安易にできない)

  • 加齢にともなって次第に低下する

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