最近の炎上案件に思うこと 〜産婦人科医の暴言、産科医療安全は前のめりか、不同意性交〜

最近、SNS等で炎上していた3つの話題について個人的な考えや思うことを書きました。
重見大介 2024.12.25
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本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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この記事で話すこと

  • 産婦人科医の暴言:トンデモ医師の存在

  • 産科医療安全は前のめりか:厚生労働省の検討会での衝撃の一幕

  • 不同意性交:医大生の性的暴行事件

  • (おまけ:最近のスナップショット写真)

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産婦人科医の暴言

これはSNSで定期的に炎上するものですね。

Xを眺めている方は、何回も目にしたことがあるんじゃないでしょうか。

先日は以下のようなポストが話題になっていました。(ことの真偽は不明ですが、こういうことは現実にゼロではないと思っています)

高校生の頃に月経不順で産婦人科を受診したら、白髪の高齢産婦人科医に「どうせ避妊して遊びたいだけだろ!」と待合室に聞こえるような声量で怒鳴られた
*実際のポストの表現を少し編集しています

これは酷すぎますが、程度の差はあれ、「産婦人科医に暴言を吐かれた」という経験はSNS上によくつぶやかれており、怒鳴られはしなかったけど傷付く言葉を言われたというケースを含めると稀ではないのでしょう。

一人の産婦人科医として、こういうのはとても悲しい。そして、こうした経験から産婦人科受診を躊躇して病気の発見や治療が遅れてしまうことに繋がりかねないのでとても重い責任があると個人的には考えています。

もちろん、時代の違いもあると思います。今の常識で見れば過去の多くの会社にパワハラが横行していたように、時代によって価値観や常識は変わりますし、よく考えればそれは人権侵害ではないかということが一昔前は習慣化されていたようなことは他にも色々ありますからね。

なので、「産婦人科での暴言」というのは一昔前にそれなりにあった可能性はありつつ、今はだいぶ減ってきているのではないかとは感じています。少なくとも、私の少し上や同年代の医師では、上記のような暴言を吐く産婦人科医は見たことがありませんし、患者さんの気持ちに配慮することを当然のように学んでいます。

それでも、以下のようなことを言われて傷付いたという声はSNSにけっこうあるので、「今は存在しない」わけではないでしょうし、「少なくなってきたからいいでしょう」と思っているわけではありません。

  • 内診台に乗せられ足を広げた状態で何分も待たされた

  • 緊急避妊薬の相談をしたら「自分が悪いってことわかってるの!?」と説教された

  • 生理痛がひどくて受診したら「妊娠すれば良くなるよ」と一蹴された

  • 重い生理痛で受診したら「これくらいなら痛み止め飲んでおけばいいでしょう、大袈裟な」で終わった

。。。書いていてムカついてきましたね。(怒)

私の先日のポストもだいぶ拡散され、産婦人科で嫌な経験をしたという声の溜まり場と化していました。(私にとってはとても勉強になりました。コメントしてくださった皆さんありがとうございました。)

Daisuke Shigemi | 重見大介 | 産婦人科医
@Dashige1
産婦人科専門医になるための研修に、「産婦人科での嫌だった経験」みたいな患者さんたちの声を学ぶ時間を盛り込んだ方がいいとけっこう真剣に思う。

・月経痛を相談したら「そのくらい大丈夫でしょ」と言われて終わった
・ピル希望したら「早く妊娠するのがいいよ」と言われた…
2024/12/09 18:58
2379Retweet 17693Likes

こういう言動をする医師は、重要な知識が欠けているか、患者さんの心情に配慮する想像力が足りてないか、昔の謎の価値観を踏襲しているか、とかだと思ってます。少なくとも、いずれも「かかりつけ医にしない方が良い」が結論ですね。

ただ、産婦人科の医療機関が少ない地域では、こういう発言をする医師しか近くにいないこともありますよね。これは本当に気の毒です。

わざわざ1時間以上かけて産婦人科に受診するのも大変です。かといって時代錯誤な医師のもとへ通院したくもない。

これを解決できる一つの可能性が「遠隔医療」だと思っています。

今でも「ピルや漢方薬のオンライン処方」サービスはたくさん登場していますので、利用している人もきっといらっしゃるでしょう。他にも、私が運営している「オンライン医療相談」という形態のサービスもあり、こちらは診断や処方はできませんが気軽に専門家へ相談ができるものです。

このようなものを総称して「遠隔医療」と呼ぶのですが、信頼できる運営組織で、医師の質が高く、女性の心情や不安に寄り添い、健康の向上に寄与する対応をしてくれるのであれば、地理的限界を克服できる手段になりますのでとても有効なものだと言えます。(ただ、今は、特にピルのオンライン診療サービス [and/or担当している医師]の質はだいぶ低めなことがある、と感じています)

なお、現状は、「遠隔での身体診察」はほぼできない状態ですので、もし将来的に「クリニック等にいる訓練された看護師がエコー検査を実施し、オンラインで産婦人科専門医が診察する」とか、「自宅で検査が可能なデバイスが普及し、一定の検査は自宅からでも可能になる」ような未来が来れば、より幅広い課題に遠隔医療が貢献できるようになると思っています。

いろいろ書きましたが、暴言や傷付く言葉を投げかけてくる医師は現代にも少数ながら存在します。残念ながら、そうした医師を厳しく管理監督する組織はありません(学会や医会、医師会は、そのような観点でのクオリティコントロールを積極的にはしていないんですよね。というか詐欺まがいな自費診療をバンバンしてるような医師も医師免許剥奪になってないですからね。。日本のおかしい部分だと思ってます)。

時代とともに改善傾向にはありますし、今はネットやSNSを通じて悪評は広まりやすいです。個人的には、ひどい対応だった医療機関についてはそうした声が見える化されていくべきだと思っています。

私自身、遠隔医療のサービス開発や普及に注力していますし、より良い医療機関を見つけやすくなるような仕組み作りをしていければなと思っています。

素晴らしい産婦人科医はたくさんいますので、皆さんがそうした素晴らしいかかりつけ医に巡り会えることを願っています。

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