私たちが子どもにできること 〜非認知能力についての考え方〜①

シリーズ記事として、子どもの非認知能力について参考書籍をベースに解説していきます。前半部分は無料で読めます。
重見大介 2023.03.04
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こんにちは。本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。

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この記事でわかること

  • 非認知能力とは何か

  • 非認知能力の重要性

  • 非認知能力は「スキルとして身につける」ものなのか

  • 非認知能力を伸ばすために重要な親としての関わりかた

  • 子どもにとってのストレスやトラウマの長期的影響

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非認知能力とは

近年、「非認知能力」という言葉を耳にすることが増えてきた気がします。

IQや学力といった、試験やテストで評価するような能力は「認知能力(cognitive skills)」と呼ばれています。
一方、物事に対する考え方、取り組む姿勢、粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観的思考など、日常生活・社会活動の様々な面で大きな影響を与える能力は「非認知能力(non-cognitive skills)」と呼ばれています。

「認知能力」は、受験で必要とされる代表的な能力です。計算や記憶力などが問われますが、最近ではコンピュターやインターネット、人工知能(AI)の発達と普及により、「人間より機械の方がはるかに優秀で仕事が早い」と認識されるようになってきています。

もちろん、ある程度のベースとなる「認知能力」は生活に必須ですし、様々な作業やタスクをこなす効率を上げてくれます。
しかし、そもそも「認知能力」を身につけるためには勉強する必要があり、多くの保護者や子どもたちは「どうやって効率よく長時間の勉強をすればいいのか」に悩まされてきました。これに、「非認知能力」が大きな関わりを持っています。

「非認知能力」は、前述のように「数値化しにくい能力」のため、「認知能力」に比べて研究やデータの蓄積が難しいという特徴があります。このため、これまで「認知能力」の重要性が先行してきたという一面もあるでしょう。
しかし、デジタルネイティブと呼ばれる今の時代に生きる子どもたちにとって、「非認知能力」の重要性がますます大きくなっていることは間違いありません。

本シリーズ記事では、3回にわたって「非認知能力」について、どのようなデータがわかってきているのか、私たちはどう捉えれば良いのか、そして私たちに何ができるのかをお伝えしていきます。

*本シリーズでは「私たちは子どもに何ができるのか(HELPING CHILDREN SCCEED)」(英治出版)を参考書籍として用います。

非認知能力の重要性

まず、非認知能力の重要性について考えます。

近年、日本では「子どもを産み、育てること」に大きな抵抗感を持っている若者が増えています。2023年2月に実施されたアンケート調査(ビッグローブ株式会社。全国の18歳から25歳までの男女500人を対象。)では、

  • 「将来、子どもがほしくない」というZ世代は45.7%

  • 「子どもがほしいと思わない理由」は「お金の問題」(17.7%)、「お金の問題以外」(42.1%)、「両方」(40.2%)

  • 「子どもがほしいと思わない理由」の「お金の問題以外」は、「育てる自信がないから」、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」、「自由がなくなるから」が上位

という結果となっています。
半数近くの若者が「子どもをほしいと思っていない」状況であり、その理由として「経済面」は合計で約6割でした。

以上から、今の日本では「経済的に余裕のある状況で子育てができると考えられていない」と言えるでしょう。
実際に、経済協力開発機構(OECD)の調査では、各国の子ども・子育て支援に対する公的支出(2017年)は日本が対GDP比で1.79%と、OECD平均の2.34%を下回っています。出生率の高いフランス(3.6%)と比べると半分に満たないでですね。また、教育費支出(2019年)の対GDP比をみると日本は2.85%で、OECD平均の4.07%よりかなり低いです。ノルウェー(6.38%)の半分に満たない状況です。

こうしたことは、様々な意味での「貧しさ」に繋がります。
そして、この様々な「貧しさ」は、子どもの成長や将来の仕事、収入などに大きな影響を与えることがこれまでのデータでわかっています。

加えて、「非認知能力」が高い子どもの方が、将来のいろいろなリスクが低いこともわかってきています。例えば、2011年に報告された海外の研究では、ニュージーランドで生まれた1000人の子どもを長期間追跡し、非認知能力の高い子どもの方が学歴が高く、健康状態が良く、シングルペアレントになる可能性は低く、借金を抱えたり犯罪をおかしたりする可能性が低いというデータが示されています。(Moffitt TE, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Feb 15;108(7):2693-8.)

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