将来の「心臓病」を予防するために大切なこと 〜女性特有の注意点や対策を踏まえて〜
今回は、女性特有の心臓病リスクにも触れながら、日常生活でできる予防策を具体的に解説します。
この記事でわかること
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「心臓病」の主な種類とその特徴
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男性に比べた女性の特徴
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発症の危険因子
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予防策①:食生活について
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予防策②:運動について
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予防策③:健康診断について
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更年期障害に対するホルモン補充療法と心臓病の関係
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マイオピニオン(私個人の考えや意見)
「心臓病」とはどんなもの?
「心臓病」は世界中で多くの女性の命を脅かす主要な原因の一つです。日本のデータでも、心疾患は女性の死因の第3位となっています。(1)
「心臓病」とは正式な医学用語ではありません。一般的にこの用語が用いられる際には「心臓に影響を与える一連の疾患」を指します。
心臓は体の中で血液を全身に送るポンプの役割を果たしており、その機能が何らかの理由で低下したり、損傷を受けたりすると、「心臓病」が発生したことになります。
「心臓病」の主な種類とその特徴
まず、「心臓病」にはどのような疾患があるのかきちんと押さえておきましょう。
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冠動脈性心疾患(CAD: Coronary Artery Disease)
「虚血性心疾患」とも呼ばれます。この病気は、心臓への血液の流れが減少することで発生します。冠動脈は心臓に血液と酸素を供給する重要な血管ですが、脂肪やコレステロールの蓄積によってこれらの血管が狭くなり、血流が妨げられます。これが狭心症や心筋梗塞(一般的には「心臓発作」と呼ばれる)の原因になることがあります。結果的に、心臓がきちんと動かなくなって「心不全」の状態になってしまいます。 -
心不全(Heart Failure)
心不全は、心臓の拍動力が弱まり、血液をしっかり全身に送ることができなくなる状態を指します。これにより、体のさまざまな部分に十分な酸素や栄養を送り届けることができなくなります。症状には、呼吸困難、息切れ、手足のむくみ、疲労感などがあります。 -
心筋症(Cardiomyopathy)
この病気は、心筋(心臓の筋肉)が硬くなったり、膨らんだり、肥大したりするものです。これにより、心臓は心不全の状態となることが問題となります。心筋症にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる原因と治療法があります。 -
不整脈(Arrhythmia)
不整脈は、心臓の心拍リズムや速度の異常を指します。心臓が拍動を速く打つ(頻脈)、遅く打つ(徐脈)、または不規則に打つ(心房細動など)と、全身への血液供給が不十分になったり、血栓症が起きやすくなったりします。 -
先天性心疾患(Congenital Heart Disease)
生まれつきの心臓の構造的異常で、心室中隔欠損症(心室の壁に穴が開く)や動脈管開存症(胎児の時にだけ必要だった血管がきちんと閉じない)などがあります。
虚血性心疾患のイメージ図. Cleveland Clinic.より引用. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17145-ischemic-cardiomyopathy
女性の特徴
上記の中で、普段の生活習慣がもっとも影響するのは一つ目に挙げた「冠動脈性心疾患(虚血性心疾患)」です。ここからは、この「冠動脈性心疾患(虚血性心疾患)」に焦点を当てていきます。
女性は男性に比べてこの疾患が起こりにくい(約1/2〜1/4程度)とされていますが、以下のような特徴があります。
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閉経後に発症しやすくなるので高齢発症が多い
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高血圧や脂質異常症などの生活習慣病が影響している場合が多い
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息切れ、疲労感、背中や顎の痛みなど「胸の痛み」以外の症状を自覚する人が男性より多い傾向にある
閉経後に発症しやすくなるのは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少し、エストロゲンが持っていた血管系の保護作用(血管を広げる、抗酸化、コレステロールの代謝亢進など)がなくなってしまうためだと考えられています。