性教育シリーズ(7) 〜デジタルネイティブ時代の注意点〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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最近では性教育に注目が集まりつつあり、書籍やネット記事も増えてきています。でも、まだまだ「性教育って何したらいいかわからない」「自然に覚えていくものでは?」と思っている人もいるのではないでしょうか。
性教育シリーズの第7回目として、デジタルネイティブ時代の注意点について考えていきましょう。
この記事でわかること
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「包括的性教育」とはどういうものか
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性にまつわるデジタルネイティブ時代の注意点
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具体的な性犯罪や事件の紹介
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伝えるときのポイント(1) 正確な情報の見分け方
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伝えるときのポイント(2) プライバシーとセキュリティの意識を持つ
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伝えるときのポイント(3) オンラインコミュニケーションのリスクを理解する
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伝えるときのポイント(4) 健全な人間関係を構築していく
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具体的な伝え方の例
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将来の仕事でも役立つ場面や理由
「包括的性教育」のおさらい
日本で多くの人がイメージする「性教育」は、「性に関する知識やスキル」として、妊娠・出産の仕組みや避妊、性感染症予防を教える(学ぶ)ことかもしれません。
しかし、「包括的性教育」はこれとは異なる概念です。国際的に広く認知・推進されている、「性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ」ための重要な概念なのです。英語ではcomprehensive sexuality education (CSE) などと表現されます。
詳細は以前の記事にまとめたので、まだ読んでないという方はぜひ先にご覧ください。
性にまつわるデジタルネイティブ時代の注意点
デジタルネイティブ世代、つまりインターネットやスマートフォンと共に育った子ども・若者たちにとって、情報へのアクセスは以前とは比べ物にならないほど容易になりました。これにより、性に関する情報も簡単に手に入るようになりましたが、その一方で正確性や信頼性に欠ける情報も多く存在します。
以下に、注意点を挙げていきます。
(1) インターネット上には多様な情報が氾濫しており、特に性に関する情報は誤解を招くものや偏ったものが少なくありません。若者たちはこれらの情報に触れることで誤った知識を持つ危険性があります。そのため、信頼できる情報源を見極めるスキルが必要です。
(2) ソーシャルメディア(SNS)の普及により、プライバシーの問題も深刻化しています。若者たちは自分の個人的な情報や画像を簡単に共有することができるため、不適切な情報の拡散やプライバシー侵害のリスクが高まります。特に、性的なコンテンツやプライベートな写真が意図せずに広まることで、大きなトラブルに発展することがあります。
(3) オンライン上でのいじめやハラスメントも問題です。匿名性が高いインターネット環境では、いじめや性的ハラスメントが発生しやすくなります。これにより、ターゲットとされてしまうと心理的なストレスや不安を抱えることが多く、精神的な健康に悪影響が生じます。
(4) オンライン上での出会いも注意が必要です。SNSやマッチングアプリを通じて簡単に新しい人と出会える時代ですが、その相手が必ずしも安全で信頼できるとは限りません。偽のプロフィールや悪意を持った人々によるトラブルも発生しやすくなります。
これらの注意点を踏まえ、デジタルネイティブ世代には、性に関する情報を正しく理解し、適切な判断ができるよう、デジタル時代特有の理解をしてもらう必要があると考えられます。オンライン上でのプライバシー管理やトラブル対処法についてもしっかりと学んでおく必要があるでしょう。