オーガズム後に体調が悪くなる病気...?近年やっとわかってきた不思議な病態を紐解く
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
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性行為の中で「イク」と表されるオーガズム。男女ともにある現象です。オーガズムは通常、快感やリラックスをもたらすものですよね。
しかし世の中には、オーガズムの後に毎回のように「つらい症状」に悩まされる人々もいるようなのです。この状態は「オーガズム後症候群(POIS: Post-Orgasmic Illness Syndrome)」と呼ばれ、近年になって医学的にも認識され始めた疾患のようです。
本記事では、オーガズム後症候群とは何か、どのような症状か、考えられる原因(病態の仮説)、治療法・対処法、そして男女差の観点も含めて、最新の科学的エビデンスに基づきわかりやすく紹介します。
この記事でわかること
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オーガズム後症候群が見つかった過去の歴史
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オーガズム後症候群とはどんな疾患か
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オーガズム後症候群の主な症状
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オーガズム後症候群の頻度
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考えられる原因・病態
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治療法や対処法
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男女差と産婦人科的観点から思うこと
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マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
オーガズム後症候群が見つかった過去の歴史
時は2002年まで遡ります。
WaldingerとSchweitzerという医師は、それまで医学文献に記載されたことのなかった、非常に珍しい症状を訴える2名の男性に関する症例報告を発表しました(文献1)。その男性らは、射精直後に体調不良に陥るという特徴を持っていたのです。この症状は、性交時、自慰行為(マスターベーション)時、あるいは夜間の無意識の射精(夢精)時のいずれにおいても起きていました。
著者らは、この珍しい疾患に新しく名前を付け、「オーガズム後症候群(Post Orgasmic Illness Syndrome)」と呼称しました。
この最初の発表以降、世界中で自身の症状がオーガズム後症候群だと考える男性が散見されたとのことです。その後、医学的な正式名称として扱われることになり、それまでは「ちゃんとした疾患ではない」として「精神的なものでしょう」とか「原因不明でなんとも言えないですね」と医師に告げられてきた状態が、一つの疾患としてみなされたという経緯がありました。
実は、私も前回の質問募集の際に質問されるまで全然この疾患を知らなかったので、調べてみたのですが、いやー驚きました。こんな疾患があったとは。。!
せっかくなので詳しく解説していきます!
*前回のQ&Aはこちら
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