帝王切開についてよくある5つの誤解

帝王切開。皆さん一度は聞いたことがある言葉でしょうし、実際に受けたことのある女性も多いのではないでしょうか。今回は、帝王切開についてよくある5つの誤解と医学的に正しい回答をお伝えします。
重見大介 2023.03.21
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帝王切開によくある5つの誤解

待望の赤ちゃんとの出会いは、人生で最も感動的な瞬間の一つかもしれません。しかし、出産の方法について不安や誤解があることも、多くの女性やそのご家族を悩ませています。特に帝王切開に対する誤解や誤情報は根強く、そのリスクや選択肢について混乱している方も少なくないでしょう。帝王切開は、2020年のデータで全分娩のうち約22%を占めていますし、今後もこの割合は増えていく可能性があります (1)。

今回は、帝王切開にまつわる5つのよくある誤解・誤情報と、それに対する医学的な正しい回答を紹介します。将来妊娠を考えている方、妊活中の方、妊娠中の方、そしてそのパートナーやご家族の方に役立つものだと思います。

帝王切開の一般な手術の流れ

まず、帝王切開の一般的な手術の流れを説明しておきます。

  • 入院および事前検査:通常、手術前に入院し、必要な検査や説明を受けます。

  • 麻酔:手術室に入室後、一般的に下半身麻酔(脊椎麻酔や硬膜外麻酔)が用いられます。

  • 手術部位の消毒:手術部位の清潔を保つため、皮膚を消毒し、場合によっては必要な範囲を剃毛します。

  • 皮膚の切開:まず腹部の皮膚を横方向(場合によっては縦)に切開し、その後筋肉や膜を開いていって子宮に到達します。

  • 子宮の切開:子宮壁を切開(通常は横切開)し、赤ちゃんが出てこれるような出口を作ります。

  • 赤ちゃんの娩出:赤ちゃんを子宮から取り出し、臍の緒が切られます。赤ちゃんは待機している手術スタッフや助産師に手渡されます。

  • 胎盤の娩出:赤ちゃんが取り出された後、胎盤が子宮から取り出されます。

  • 子宮と腹部の縫合:出血部位を止血しながら子宮壁を縫合し、その後に筋肉、膜、皮膚を順番に元の状態に戻していきます(施設や医師によって多少の違いがあります)。

  • 手術の終了:手術が終了すると状態に問題ないことを確認後に病室へ帰ります。

  • 術後観察・リハビリ:特に手術後24時間は状況に変化がないかをよく観察します。術後、日本では概ね1週間ほど入院することになります。

誤解(1) 帝王切開は簡単で痛みのない出産だ

帝王切開は手術の一つです。通常、手術というと「痛いもの・怖いもの」というイメージを抱きやすいかと思いますが、帝王切開は「普通分娩」(経腟分娩のこと)と比較されるため、「麻酔がかかって陣痛はないし、気づけば出産が終わっていて楽なのでは」というイメージが持たれている場合があります。

しかし、これは大きな間違いを含んでいます。
帝王切開は外科手術であり、麻酔が使用されますが、基本的には「下半身麻酔」が使用されます。これは、全身麻酔だとまだお腹の中にいる赤ちゃんへ血流を介して麻酔薬が移行してしまうリスクがあるためです(超緊急帝王切開など一部では全身麻酔を使う場合があります)。

下半身麻酔でも十分に麻酔が効けば痛みは全く感じませんが、以下の注意点があります。

  • 麻酔時に背中から針を刺すためそこの恐怖や痛みが辛い人もいる

  • 赤ちゃんが取り出されるまで意識があるためお腹の中を触られている感覚や恐怖感はなくせない

  • 一般的に数時間で麻酔が切れてくるため比較的早期に術後の痛みを感じやすい

また、「簡単な手術」という部分にも誤解があります。
確かに、ほとんどの帝王切開は1時間程度で終わりますし、何もトラブルなく終えるケースがほとんどです。しかし、中には以下のような術中合併症が生じる可能性があり、これは術前に「リスクは低い」と判断されていた患者さんでも起こり得るものです。

  • 多量出血(概ね800〜1000cc以上の出血では「多い」と扱われます)

  • 臓器損傷(尿管や腸管が傷付くなど。2回目以降の帝王切開では癒着があるのでリスクが上がります)

  • 麻酔関連(アナフィラキシーショックなど)

  • 新生児への影響(娩出時の損傷や予想外の呼吸障害など)

上記の術中合併症以外にも、手術後に生じる合併症(お腹の中の感染、創部の感染、創部の離開、血栓塞栓症など)もあります。頻度が高くないとはいえ「簡単な手術」とは言えないことがイメージできたのではないでしょうか。

誤解(2) 帝王切開は誰でも選んで受けられるものだ

帝王切開は、その実施にあたってきちんと適応(医学的理由)が必要となります。
適応は以下のようなものがあります。

  • 胎児の位置異常(骨盤位 [逆子]、横位など向きが特殊な場合)

  • 妊婦の合併症(心臓などの合併症を持っている、血圧が非常に高くなっているなど)

  • その他の緊急事態(胎児の心拍数が低下しており危険な場合など)

このため、少なくとも日本では、帝王切開するべきかどうかは医師の判断に基づきます。
「帝王切開は陣痛がなくて楽そうだ」という誤解は1つ目の誤解にも関連しますが、そのような希望で誰もが帝王切開を受けられるわけではありませんし、理由がないのに合併症リスクに妊婦さんを晒すわけにはいかないのです。

誤解(3) 帝王切開を受けると次の出産も必ず帝王切開になる

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続きは、1989文字あります。
  • 誤解(4) 帝王切開は母子の絆を弱めてしまう
  • 誤解(5) 帝王切開は母親の授乳に悪影響を与える

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