腟の緩みって治せるの? 〜治療法・対処法を科学的に解説します〜
本ニュースレターでは、女性の健康や産婦人科医療に関わるホットトピックや社会課題、注目のサービス、テクノロジーなどについて、産婦人科医・重見大介がわかりやすく紹介・解説しています。「○○が注目されているけど、実は/正直言ってxxなんです」というような表では話しにくい本音も話します。
今回はサポートメンバー限定記事です。最後までご覧になりたい方はサポートメンバー登録をお願いいたします。
「腟の緩み」と聞いてドキッとした方もいるかもしれません。出産や加齢を経て、多くの女性が密かに悩むこのテーマ。相談するのが恥ずかしい、治療法がよく分からないと感じている方も多いと思います。
今回は、最新の研究論文を基に、腟の緩みの原因や治療法、日常でのケア方法をわかりやすく解説します。気になる症状に対する正しい知識と選択肢を知る機会になれば嬉しいです。
この記事でわかること
-
腟の緩みの原因とよくある悩み
-
腟の緩みを改善するための治療法とその効果
-
治療を考える際に知っておきたいリスクと注意点
-
腟の緩みを予防・改善する日常ケア
-
マイオピニオン(総合的な私個人の考えや意見)
腟の緩みとは?原因とよくある悩み
腟の緩み(腟の弛緩。英語論文では"vaginal laxity"と表現されます)とは、文字通り腟が「ゆるんだ」と感じる状態を指します。
医学的には、「性的機能不全」(Female sexual dysfunction)の症状の一つとされており、「過度に腟が緩んでいる状態」と定義されます。
腟の組織や筋肉が緩むことで起こり、性行為中に刺激を感じにくい、尿漏れが起こりやすいといった症状として現れることがあります。多くの女性にとってセンシティブな問題でありながら、実は非常によくある悩みです。
「腟の緩み」は、これまでの海外の研究結果によると、成人女性の24〜38%程度が有していると報告されています。(文献1,2)
腟の緩みが起こる主な原因
腟の緩みの原因には、以下のようなものがあります。
-
出産
経腟分娩による骨盤底筋や腟の組織への負担が主な要因です。特に、赤ちゃんの頭が大きい場合や、長時間の分娩で腟に強いストレスがかかった場合、組織が引き伸ばされて緩みやすくなる可能性があります。 -
加齢
年齢を重ねるとともに、エストロゲンというホルモンの減少が腟の組織を薄くし、柔軟性や弾力を失わせます。これにより腟の緩みを感じやすくなります。 -
生活習慣
肥満や喫煙、慢性的な便秘も骨盤底筋に負担をかけ、腟の緩みに影響することがあります。
よくある悩みと誤解
この状態に悩む女性の中には、以下のような声が多く聞かれます。
-
「性行為中の快感が以前より減った気がする」
-
「腟が広がった感じがして、パートナーとの関係に自信が持てない」
-
「尿漏れが増えて日常生活が不便になっている」
腟の緩みは単に女性の感覚だけでなく、性機能や生活の質にも影響を及ぼすことが最近の研究でも示されています。
腟の緩みは多くの女性が抱える悩みでありながら、その対処法や改善の可能性についての正しい知識はあまり知られていません。
この続きでは、具体的な治療法や日常ケアについて解説していきます。